AI(人工知能)スタートアップELYZA(イライザ、東京・文京)は、「まとめる、書く、読む、話す」を人間並みに実現する日本語AIサービス「大規模言語AI イライザ」を発表した。大手企業との共同開発も進んでおり、ホワイトカラーの業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を目指しているという。海外では、大規模言語AIの重要性に注目が集まっているというが、日本国内ではまだあまり知られていないのが現状だ。このサービスを通して、どのような未来をつくろうとしているのか。ELYZA、CEO(最高経営責任者)である曽根岡 侑也氏に話を聞いた。

ELYZA、CEOである曽根岡侑也氏
ELYZA、CEOである曽根岡侑也氏

 ELYZAは、AI研究で知られる東京大学の松尾研究室から2018年にスピンアウトしてできた会社だ。言語を扱うAIに特化した理由を、曽根岡氏は次のように語る。

「自然言語処理のAIは、ここ数年で劇的な不連続の変化が起きている。その立役者となっているのが、『大規模言語AI』というものだ。我々はそのテクノロジーを活用し、20年の時点で日本語において、人間を超える精度のAIを実現した」

 画像認識で、AIが人間の精度を超えたのは15年だ。しかし、言語の分野では、人間の能力には遠く及ばない時代が長く続いた。その潮目を変えたのが、18年10月に米グーグルが発表した「BERT」という自然言語処理モデルだ。

 「ここから急激に精度が向上し、その8カ月後の19年6月には、英語のテキスト認識で人間の精度を超えてしまった」と曽根岡氏。

 これを受けて、GAFAMや人工知能を研究する非営利団体「OpenAI」などが、次々と人間を超えるAIを開発する。文字読解では人間の正答率が82.3%だったのに対し、AIは87.4%をたたき出したという。また、リポート作成においては、人間が3日かかったものをAIは20分で終わらせたというから驚きだ。

「まとめる、書く、読む、話す」AIで、ホワイトカラーをDX化

 こうしたテクノロジーを日本語に特化し、サービス化したのが「大規模言語AI イライザ」だ。「まとめる、書く、読む、話す」を人間並みに実現し、ホワイトカラーの業務のDX化を目指すという。

 「他にも自然言語処理のAIを開発する企業はあるが、ホワイトカラーのDX化をうたっているのは我々だけだろう。すでに多くの企業と共同開発を進めている」と曽根岡氏は語る。

 損保ジャパンと進めているのが、コールセンターでの活用だ。コールセンターでは、顧客の電話を受けた後、その会話の内容をまとめて記録するという業務がある。この要約をイライザに任せることで、業務の効率化を図ろうとしている。

 また、求人情報大手のマイナビでは、人によって書かれている大量の求人情報の原稿執筆そのものにイライザを活用しようと実証実験中だ。

 さらには「読むAI」を活用し、森・濱田松本法律事務所とともに、契約書の読解や情報抽出業務の領域で、AI開発研究に取り組む。

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