芸能プロダクションのアミューズが、Web3やメタバース、NFT(非代替性トークン)などエンターテインメント分野でのテクノロジー活用に本腰を入れ始めた。同社はサザンオールスターズ、福山雅治ら有名アーティスト・タレントを多数擁する大手。2022年6月にテクノロジー推進の新会社と、関連分野のスタートアップに投資するファンドの設立を発表した。新たなテクノロジーを活用した新たなエンターテインメントを創出するのが狙いだ。
「エンターテインメントの未来のためにあるべき手を打っている会社だと思ってもらえるようなプロジェクトを出すことが重要」
こう話すのは、新会社Kulture(東京・渋谷)の代表取締役である白石耕介氏だ。22年4月に設立した新会社のミッションは「テクノロジーの進化と共に、新しいエンターテインメントを創造する」――。来るべきWeb3やメタバースの時代に向けて、アーティストやタレントなどのIP(知的財産)の新たな価値を生み出そうというわけだ。
新しいエンターテインメントの創出とはいったい何か――。「先端テクノロジーを取り入れて市場に対して競争優位を持つようなエンターテインメントのソリューションビジネスを自らつくっている会社になる。そして、デジタルでアーティスト活動をどんどん強化していきます」と語る白石氏は、具体的な取り組みとして大きく3つを掲げる。
1つは、新しい時代にあったサービスをつくり上げること。コンテンツの魅力を引き出すサービス群を企画・開発する。
2つ目は、Web3、メタバース、NFTなどを活用した新たなIPマーケティングを仕掛けること。デジタルを起点にしたマーケティング施策などの実施だ。
3つ目は、デジタルの仕掛けを中心に売り出したり、デジタル上で活躍したりするようなIPを積極的につくっていくこと。リアルなアーティストに限定しないデジタルを主戦場としたIPや、既存アーティストのデジタル展開などを進める。
具体的な事業としての第1弾も、会社設立の発表と同時に始めた。NFTのコンテンツである「Kulture membership Pre-Launch NFT」の販売だ。Kultureの公式サイトに掲載しているキービジュアル4作品の限定NFTを22年6月下旬から、1つ0.05ETH(暗号資産、執筆時点のレートで1万円程度)で販売した。用意した16個は1日で売り切れたという。NFTの保有者は、今後立ち上げる予定のコミュニティー「Kulture Klub(仮称)」のメンバーとして、コミュニティーづくりに携われる。
スタートアップへの投資事業である「KultureFUND」も設立した。Web3やメタバースなどのビジネスを「自分たちで100%できるとは思っていません」と白石氏。ファンドを通じて投資することでパートナーを増やし、新たなエンターテインメントを創出する。テクノロジーの進化に伴う環境変化に対応するための取り組みの一つだ。「スピード感を上げるため、Kulture独自の判断で決済できるようにしたのがポイント」と話す白石氏。「シードラウンド、シリーズAくらいのスタートアップに、1社で最高1億円までを目安に投資します」(白石氏)と言う。
販売されたNFT作品
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