ECサービスのBEENOSが、日本国内の商品を海外のユーザーに向けて販売する“越境EC”事業を拡大している。同社は既存のECサイトのカートを多言語対応するなどして海外から購入しやすくするサービスなどを運営している。なぜ今越境ECが伸びているのか、どんなものが売れているのか――BEENOS社長兼グループCEO(最高経営責任者)の直井聖太氏に聞いた。

BEENOS社長兼グループCEO(最高経営責任者)の直井聖太氏
BEENOS社長兼グループCEO(最高経営責任者)の直井聖太氏

越境ECが当たり前の世の中になっている

――「越境EC」が伸びているようですね。

直井聖太氏(以下、直井) 経済産業省が発表した「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によると、越境ECは2020年には9940億米ドル(約114兆円)と発表されている通り、成長傾向にある市場です。実際に、Buyeeの2021年の流通総額は、コロナ禍において過去最高の365億円(前年同期比59%増)を達成しています。

 とはいえ、個人的には市場はもっとあると思っています。例えば、Amazonや楽天などのECサイトで、海外のメーカーを目にしたり、購入したりした経験がある人もいると思います。実は、これがまさしく“越境EC”。越境ECという言葉自体は耳なじみがないかもしれませんが、今や海外の製品を国内で購入することが当たり前の時代になっています。しかし、大手マーケットプレイスは取引の数字を公開しないケースが多いので、統計に入ってきていないと考えると、かなり大きな市場規模になっていると思います。

――Amazonも一種の越境ECと言えますね。一方、BEENOSさんは同じ越境ECで「Buyee」というサービスを提供されていますが、どのようなサービスなのでしょうか?

直井 先ほど日本で海外製品を買うことが当たり前になっていると言いましたが、「Buyee」ではその逆のこと──海外のユーザーが日本国内の製品を購入できます。Buyeeを導入すると、海外販売の障壁となる「言語」「決済」「物流」の問題が解消され、一括で世界118カ国と地域への販売が可能になります。海外のユーザーが商品を注文するとBuyeeが海外の顧客の代わりに日本の商品を買い付け、そのユーザーに商品を配送するという仕組みです。いわゆる購入サポートのビジネスモデルになります。

 Buyeeには「Buyee」と「Buyee Connect」という2種類のサービスがあります。「Buyee」はAmazonや楽天市場のように、様々な企業が出店するモール型のサイトです。10言語の翻訳に対応しており、「ヤフオク!」や「メルカリ」、「ユナイテッドアローズ」、「ZOZOTOWN」など150以上の企業が出店しています。当グループの海外向け越境EC関連サービスを合わせて会員数は330万人以上です。

 一方、「Buyee Connect」は自社サイトを簡単に越境EC化できるサービスです。自社ECサイトに専用のタグを埋め込むと海外からアクセスしたユーザーにのみBuyeeのカートがポップアップ形式で現れて購入できる仕組みです。現在、「ベイクルーズ」や「アーバンリサーチ」、「honto」、「北欧、暮らしの道具店」などが導入しています。この2種類のサービスでは今春、海外ユーザーのデモグラフィックや購買データをリアルタイムで可視化できるよう準備を進めています。

 これらを含めて弊社の越境EC関連のサービスの導入実績は2700サイト以上です。21年によく売れた商品ジャンルのベスト5は、(1)おもちゃ、ゲーム(2)ファッション(3)アクセサリー、時計(4)家電、AV、カメラ(5)自動車、オートバイです。

21年11月に発表した越境ECのヒット商品ベスト5。ゲーム関連などが売れている
2021年11月に発表した越境ECのヒット商品ベスト5。ゲーム関連などが売れている
こちらは東南アジアで売れている商品。ファッション関連も人気だ(写真/吾妻拓)
こちらは東南アジアで売れている商品。ファッション関連も人気だ(写真/吾妻拓)

――Buyeeを利用しなくても、日本企業は直接海外で商品を売ればいいのでは……。

直井 自社での越境ECの展開がなかなか難しいのが現状です。理由は2つあります。1つは、海外のインターネットショッピング・モール出店のハードルが高いことです。近年、消費が爆発している中国ではECでの取引が盛んです。特に、中国最大のインターネット企業、阿里巴巴(アリババ)が運営するC2C向けのマーケットプレイス「淘宝網(タオバオ)」や、B2C型のモール「天猫(Tmall)」、13年に開設した越境EC専門のモール「天猫国際(Tmall Global)」などが有名で、そこでの出店を目指す日本企業も少なくありません。しかし、実際に出店できるのは、Tmall側で中国でも売れると判断された企業のみ。Tmallのパートナーに選ばれなければ対応してもらえないため、日本企業にとってはハードルが高いのです。

 そして2つ目が、自社内に越境ECのチームを作るにはコストがかかることです。カスタマー対応や、決済、海外への発送はリスクも伴いますが、一から開発するにはコストがかかります。その上、そもそも日本にはECの人材が不足しているといわれている中で、越境ECの人材を確保するのは至難の業。ECに関する情報も希薄で、事実上難しいのです。

 その点、Buyeeは海外に向けた新たなECサイトを構築する必要がなく、海外ユーザーのみが手数料を負担するため、企業にとってはかなり低リスク。また、海外のマーケットプレイスとの連携を望んでいる会社については、プラットフォーム自体をつなげる「クロスプラットフォーム」という事業も展開しています。こちらは従量課金のビジネスモデルで、カスタマーサポートや物流、またそのマーケティングといった運営全般を一気通貫で支援します。「メルカリ」と「タオバオ」、東南アジア・台湾最大のマーケットプレイス「Shopee」との連携もサポートしており、販路が拡大するメリットもあります。当社は、こうした物流の裏側の仕組みが強み。独自の収益構造を作り上げることで、自社でECチームを作成するよりもコストを抑えることが可能です。

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