世界的に音楽配信サービスの人気が高まっている。国内でも、日本レコード協会の音楽配信売上四半期数値によると、ストリーミングの「サブスクリプション/音楽」は、金額ベースで2019年は前年同期比130%、20年は前年同期比125%と、2桁成長が続いている。SNSの反応を含めた、楽曲がどう聴かれているかの解析がヒットの鍵を握っている。
その中で存在感を高めているのが、世界45カ所の拠点を持つ、音楽ディストリビューションの米ジ・オーチャードだ。音楽を世界中の音楽配信サービスに一括で届けられるサービスを提供しており、インディーズのアーティストや音楽レーベルを中心に利用されている。
日本では「ジ・オーチャード・ジャパン」を19年に開設し、2年間でシェアを約5倍に伸ばすなど、ビジネスを急拡大しつつある。音楽配信サービスの中でジ・オーチャード・ジャパンが果たす役割と、クライアントにとってのメリットについて聞いた。
2年間でシェア5倍、販売楽曲数は17倍に
ジ・オーチャード・ジャパンに音楽や映像データを預けると、例えば米アップルの「Apple Music」やスウェーデンの「Spotify」といった大手を含む、世界各地の音楽配信サービスでの配信を代行してくれる。
配信代行だけでなく、独自の解析ツールでその実績を可視化。マーケティングやプロモーションに向けたデータ分析と、それに基づくアドバイスなども提供している。配信した楽曲が、どのDSP(Digital Sales Provider、配信事業者)でどんなユーザーにどのように聴かれているかが分かるので、例えば、再生回数が伸びている地域でプロモーションを強化してヒットにつなげるなど、日本を含む全世界へ向けた効果的なマーケティング施策に役立つ。
海外には、日本であまり知られていないDSPが数多くある。国によって人気のあるDSPは異なり、同じアーティストであっても人気のある楽曲が異なっていたりもする。海外にリーチしたいとき、アーティストやレーベル側だけで多数のDSPと契約したり、それぞれについて販売実績を解析したりするのは難しい。ジ・オーチャードを通すことで、そうした手間を減らせる。
日本では、トイズファクトリーのストリーミング特化型アーティストにフォーカスした「VIA Label」、LD&K、LDH Records、つばさレコーズなどと契約している。ストリーミングのマーケットシェアは、ジ・オーチャード・ジャパンを立ち上げた19年5月と21年5月の比較で約5倍、販売された楽曲数は約17倍と大きく伸びている。
「YOASOBI」の人気をバックアップ
ジ・オーチャード・ジャパンがバックアップしているアーティストの中でもよく知られているのは、19年に第1弾楽曲をリリースした2人組ユニット「YOASOBI」だ。海外でも人気の高いアーティストで、ジ・オーチャード・ジャパンは初期からバックアップ。例えば、ジ・オーチャード・ジャパン開設の数カ月後に中国オフィスが開設された。そこと連携してYOASOBIを中国のDSPで展開、ソーシャルメディアでのプロモーションも後押しし、アジアでの人気につなげている。
21年7月には、ヒットシングル「夜に駆ける」の英語バージョン「Into The Night」をリリースして話題を集めた。米国で日本語バージョンのチャートアクションがよく、それを受けて米国のジ・オーチャードより英語バージョンについて打診があり、ジ・オーチャード・ジャパンがYOASOBI側に伝えていたのだという。海外オフィスからフィードバックがあり、それをアーティストやレーベル側に伝える、ジ・オーチャードの体制が威力を発揮している。
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