「西武ライオンズのNFT商品が発売」(9月7日)、「楽天グループがNFT事業に参入」(8月30日)、「PerfumeがNFTアートの第2弾」(8月14日)、「シヤチハタがNFTを活用した電子印鑑を共同開発」(同18日)――。連日のように企業発表やニュースに躍るキーワード。「NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)」と言われるデジタルコンテンツの市場形成に向けた動きが活発になってきた。
テクノロジーのトレンドに敏感な起業家やネット企業が注目するNFT。ごく簡単にいうと「持ち主が限定できるようにしたデジタルデータ」とでも言おうか。数量限定とか、1点ものとか、リアルの世界では当たり前にできていたものが、簡単に複製ができるデジタルの世界では実現できなかった。だが、NFTを使えば容易にできる。デジタルコンテンツを物質のように扱えるのが特徴なのだ。
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【第2回】 メタバース経済圏をめぐる攻防 NFTマーケットの行方
【第3回】 ヤフオク!でもゲームアイテム取引、LINEが見据える経済圏
【第4回】 元ライフネットの岩瀬氏が起業 NFTマーケットを始めた理由
数量限定などにできるので、目を引くのが高額取引。これでNFTが気になった人も多いことだろう。世界的な話題となったのは2021年3月、デジタルアーティストのビープル氏の作品がクリスティーズのオークションで約75億円で落札されたというニュース。NBAのデジタルトレーディングカードも人気のものは数千万円。有名選手のシュートシーンにプレーの歴史的なハイライトシーンがセットになっているものだ。最大級のNFTプラットフォームとして知られるのは米OpenSeaの「OpenSea」。米Raribleや独Mintbaseなどもある。
国内では、VRアーティストであるせきぐちあいみ氏の作品「Alternate dimension 幻想絢爛」が21年3月、OpenSeaで約1300万円の高値で落札され話題となったのが印象に残る。7月から取材を始めてみると、その勢いは日に日に増しているようにも思えるほど。「PerfumeがNFTアートの第2弾」をオークションに順次出品すると発表したのは21年8月14日。6月に出品した第1弾は約300万円で落札されたのだという。8月18日には、利用することも多くなってきた電子印鑑にNFTを活用するという発表があった。シヤチハタが早稲田リーガルコモンズ法律事務所と共同開発する。9月に入り、西武ライオンズも公式のNFT商品の販売を開始した。
国内ではNFTを取引できるマーケット(取引所)の立ち上げも盛んだ。ライフネット生命保険共同創業者の岩瀬大輔氏は21年7月23日、新しいNFTプラットフォーム「KLKTN(コレクション)」を香港で立ち上げた(後日岩瀬氏のインタビューを掲載予定)。GMOインターネットグループも21年8月末、6月に設立した新会社を通じてNFTマーケットプレイス「Adam byGMO」を開始した。LINEは21年6月、NFTアイテムの取引ができるマーケット「NFTマーケットβ」をオープンしており、年内をめどに機能を充実させた正式版をローンチする。楽天グループも21年8月30日、NFTマーケットへの参入を表明した。NFTを購入し、利用者同士で取引できる「Rakuten NFT」を22年春に始める。きゃりーぱみゅぱみゅらが所属するアソビシステムなど3社も、NFTを活用した日本から世界へのデジタル文化輸出などを核としたプロジェクトを21年8月、開始した。
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