2021年3月期に最高益をたたき出すなど、ZOZOが成長軌道に乗っている。さらなる成長を目指す同社が注力するのがパーソナライズだ。身体測定デバイス「ZOZOSUIT」で一躍脚光を浴びたPB(プライベートブランド)事業では、大きな失敗を味わった。その挫折を乗り越え、「ZOZOMAT」「ZOZOGLASS」など複数のデバイスを開発し、徐々に成功の道筋が見え始めた。ZOZOの澤田宏太郎社長がパーソナライズ戦略の勘所を明かす。
ZOZO 代表取締役社長兼CEO
――資生堂がパーソナライズ化粧品から撤退しました。パーソナライズ技術を取り入れた商品は大きな可能性を感じるものの、国内ではまだ大きく成功した商品・サービスが登場していません。その理由はどこにあると考えますか。
パーソナライズにはいくつか種類があります。まず(資生堂のような)パーソナライズ化した商品を提供する方法。もう1つは我々が得意とするリコメンド、つまり売り場をパーソナライズする方法です。前者については、パーソナライズするために消費者にデータをインプットしてもらうための手間を超える価値を提供できていないことが、成功企業が現れていない理由ではないでしょうか。
ZOZOはリアル店舗を持たないため、「オンラインだけで顧客に合った商品を提案する」というお題に対し、足のサイズを計測するZOZOMATや、肌の色を計測するZOZOGLASSを提供してきました。ですが、どう計測したらいいか分かりにくいという声は今でも多い。計測はそれほどお客様にとって大きな負担です。現状は計測結果に対して、ジャストフィットの商品を提案する程度にとどまっています。今後、より大きな価値を提供していくべきだと考えています。
一方、売り場のパーソナライズ化は、お客様にとって負担が少ない手法です。「ZOZOTOWN」で買ってもらったり、見てもらったりした商品のデータを積み重ねるだけでパーソナライズされていきます。当社では小数点以下の細かな数字にもこだわりながらリコメンドの精度を高め、ベストな回答を追求しています。派手さはないので、お客様としても劇的な変化は感じないものの、感覚的に徐々に使いやすくなっているという印象でしょう。
――ZOZOも前者のパーソナライズではZOZOSUITの測定データを基に購入できるPB(プライベートブランド)を展開しましたが、成功には至りませんでした。
我々がPB事業の失敗で学んだことは、PBで提供する付加価値が「ZOZOSUITを着て測定する」という手間を超えられなかったことです。PBではその人に合ったサイズを販売するという価値での一点突破を狙って、ベーシックなデニムやTシャツなどで攻めていきました。ニーズは確実にあったし、今でもPBを復活させてほしいという要望を耳にします。
ただ、アパレルではデザイン性を強く要求するお客様のほうが多い。ベーシックな商品をジャストフィットで売っていくだけでは不十分で、顧客が好きなブランド、着たい商品に対して適したサイズを提案していくことが最も求められている価値だと気づきました。
ですが、それでもまだ不十分だと思っています。ZOZOGLASSの提供によって、顔の計測が可能になりました。髪形などでコーディネート画像を抽出する技術も持っています。こうした、さまざまな身体データでパーソナライズの付加価値を高めていくことを目指します。
改良を加えた「ZOZOSUIT 2」は、まだ市場には配っていませんが、体のサイズに加え、もっと上のレイヤー、つまり骨格診断などにも対応したいと考えています。女性を中心に骨格診断や体診断から近しい骨格、肌の色の人と似たコーディネートを探すことも可能になります。モデルが着ている服はかわいく、かっこよく見えるのは当たり前ですが、自分が着た場合はどうなのかというイメージが湧きにくい。そのギャップを解消していきたいと考えています。
この記事は会員限定(無料)です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー