最近はやりの糖質オフダイエットは確かにやせる効果があるが、カロリーや糖質量を常に気にした食生活を続けるのは大変。実は近年、「何を食べるか」よりも「いつ食べるか」の方が健康の維持・改善への影響が大きいことが分かってきた。ホルモンの分泌や栄養素の代謝などに重要な「体内時計」のリズムを整える、理想の食事のとり方とは。
※日経トレンディ2021年7月号の記事を再構成
コロナ禍による外出自粛の影響で運動量が減り、体重が増える「コロナ太り」が顕在化している。ダイエットするなら、ここ数年で定番となった「糖質オフ」を試す人も多いだろう。今では、コンビニにはサラダチキンなどの低糖質商品があふれている時代だ。
確かに糖質を抜くとやせる効果が大きい。しかしながら、挫折した人も少なくないのではないか。カロリーや糖質量を計算しつつ、「何を食べるか」を常にコントロールし続けるのはストレスが大きく、習慣化することが困難なのだ。
【第2回】 体内時計を整えるカギは「朝食の炭水化物」「12時間以内に夕ご飯」←今回はココ
実は、健康的な食事法のトレンドは潮目が変わりつつある。食事のタイミングや内容が人間の体に与える影響を調べている時間栄養学者の大池秀明氏は、「実は何を食べるかよりも、いつ食べるかによる健康効果の方が影響が大きいことが分かってきた」と指摘する。
カギを握るのは「体内時計」だ。人間の体は約25時間周期でホルモンの分泌や栄養素の代謝などを調整しており、これをつかさどる「時計遺伝子」に働き掛ければ体内時計のリズムをコントロールできることが分かり始めた。
体内時計には2種類あり、脳の主時計と内臓などにそれぞれ存在する副時計に分かれる。脳は日の光を浴びることで動き始めることが知られているが、問題なのは副時計だ。副時計は朝食を食べるとスイッチが入るのだが、現代人は朝食を抜く場合もあり、内臓側の体内時計がしっかりと動き出さないまま生活しているケースも多い。「すると、体内の代謝が正常に行われないうえに、日中の活動レベルが低下しエネルギーを消費しきれず、肥満につながってしまう。その他にも、免疫力の低下や老化など様々な不調を体にもたらすことが知られている」(大池氏)
そこで、昼に活動し夜に休息する生体のリズムを重視して栄養摂取する時間栄養学の考え方を食生活に取り入れることで、体内時計を正常に動かしたい。時間栄養学は2017年に時計遺伝子を発見した研究がノーベル賞を受賞して注目度が急上昇。既に糖尿病患者の食事療法に取り入れられるほど注目が高まっている分野だ。
体内時計を正常に動かす方法は非常にシンプルだ。守るルールは2つ。「朝しっかり食べる」ことと、「朝食後12時間以内に夕食を食べ終える」ことだ。
しかも驚くべきことに、朝食では「炭水化物とたんぱく質を積極的に摂取すべき」(大池氏)だという。両方を同時に摂取することで、体内時計の時刻合わせに使われている「ピリオド」という時計遺伝子が活性化され、1日の代謝リズムの起点を作る。「少量でも体内時計は動き出すが、理想は300〜400キロカロリーを目安にしっかりと栄養を取るのが鉄則だ」(大池氏)。糖質は何でも悪だという思い込みは捨てた方がいい。
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朝食は炭水化物とたんぱく質で体内時計を動かすのが鉄則
さらにうれしいことに、時間栄養学の観点からすると、「昼食には何を食べてもいい」(大池氏)。日中は、脂肪細胞の分化を促進して新たな脂肪細胞を作り出す働きを持つ時計遺伝子の一つ、「BMAL1(ビーマルワン)」の量が少ない。「ラーメンやピザなどの高脂質食を食べるなら、ランチに集中すると体重増につながりづらい」(大池氏)
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昼は何を食べてもOK! 特に脂質はランチに全集中
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