本連載ではBtoB企業のブランディングについて、自社の強みの見つけ方、顧客の潜在的なニーズの見抜き方、競合との差別化、提供価値、そして社内外のブランド浸透活動のために必要なことなど、さまざまな事柄について解説してきた。最終回は、反射材ブランド「Ref Lite(レフライト)」のリブランディングに携わった当事者であるMipoxの渡邉淳社長と、取締役FOMRefLite部門長の中川健二氏のインタビューを通して、リブランディングプロジェクトの全貌をお伝えする。

反射材ブランド「Ref Lite(レフライト)」の立て直しは、労働環境と意識の改善から始まった
反射材ブランド「Ref Lite(レフライト)」の立て直しは、労働環境と人の改善から始まった

乙幡満男(以下、乙幡) なぜ、倒産目前だったレフライト事業を譲受しようと思ったのでしょうか。

渡邉淳(以下、渡邉) ある企業から「レフライトを救ってほしい」と依頼を受けたのがきっかけです。Mipoxもレフライトも、コーティングの技術を使っている点は同じ。レフライトの「ガラスビーズを一面にぎっしり詰めて並べ、輝度が高いリフレクターを作る技術」は他社にはない強みですが、それを理解できる人が私しかいない、という話でした。そこまで言うならと工場を訪問しましたが、最初は本当にひどい状態からのスタートでした。

渡邉 淳 氏
Mipox 代表取締役社長
1971年東京生まれ。日本と米国で学んだ後、94年日本ミクロコーティング(現Mipox)入社。工場現場でキャリアをスタートし、生産技術、国内営業、海外営業を担当。マレーシア駐在員、米国子会社赴任を経験。主にハードディスクの営業に携わる。その後半導体部門長、海外支援部門長に従事し、2007年取締役、08年に代表取締役社長に就任。社長就任後は赤字からの脱却、ITインフラ整備、情報の可視化、スピード経営と働き方改革を推し進める

 確かに、モノを作る技術は高い。ただ、書類は片付いていない、トイレは汚い、工場の5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)が徹底されていないなど、製造業としての基本が全くできていない。倒産寸前という状況で業績が下がり細かいところに目が回っていないのが見てとれました。

 一方で伸びしろも感じました。技術はしっかりしているものの、業績不振でできていないことがたくさんある。だからこそ、今後伸びる可能性がある。Mipoxは製造に関する「塗る技術」を強みに90年以上を生き抜いてきました。見れば技術力の有無はすぐに分かります。だから、見た瞬間にレフライトを復活させられると確信しました。

 当社は大企業が狙わないニッチ分野でトップを取り続けてきました。ニッチ分野の戦い方を熟知しているからこそ、レフライトも勝てる企業と考えました。私たちは勝てる戦略を知っていましたし、「命を守る」というミッションを持つ日本が誇る大事な製造技術をこのまま潰してはいけない、リフレクターを継承していかないといけないという使命感のようなものがありました。

3年をかけて働く環境と人を変革

乙幡 事業譲受後、どのようなことを大事にしながら改革を手掛けたのでしょうか。

渡邉 従業員のマインドが一番大事だと考えていたので、意識改革を何より重要視しました。BtoB(企業向け)事業の企業におけるM&Aは、本体から突然乗り込んでいって、「工場の機械を新しくしろ、工程や品質管理を変えろ」と、上から目線で変えたがるイメージを持たれがちです。ですが、そのやり方では人はついてこない。

 Mipoxはとにかく人を大事にする「従業員ファースト」の企業です。レフライトをMipox流のやり方で変革するにあたり、まずは働く環境を変えました。視察に行った際、工場のいろいろなところに穴が空いているなど、とにかく働くには劣悪な環境だったからです。

 汚い環境で働いていると、心も汚れて、廃れます。心が汚い状態では、良い製品は絶対に作れません。従業員が最高のパフォーマンスを出そうと努力するかといえば、到底思えない。従業員のマインドが変わらない限り、改革は不可能。だから事業譲受したときにはまず、マインドチェンジをして、心の壁を壊すことを目指しました。

乙幡 2015年12月の事業譲受から18年のリブランディング開始まで時間がかかった理由はどこにあるのでしょうか。

渡邉 リブランディングを始める条件が整うまでに時間がかかりました。先ほどの「1つの会社として、働きやすい環境に整える」が最初の条件です。仕事ができる環境が整うことによって、人の環境や心の準備が整います。そこをいいかげんにしたままリブランディングをしてもうまくいきません。

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