倒産危機から一転、予算がない中で進めたリブランディングによって復活を遂げようとしている反射材ブランド「Ref Lite(レフライト)」を例に、BtoB企業のブランディングについてさまざまなケースを紹介してきた。今回はブランディングを進めるにあたり不可欠な「社内外のブランド浸透活動」について、具体的に紹介していく。レフライトはPRを有効活用して、ファッション業界を開拓。月の問い合わせを数倍に増やした。

反射材ブランド「Ref Lite(レフライト)」はファッション業界へとシェアを広げるために、PRを有効活用した
反射材ブランド「Ref Lite(レフライト)」はファッション業界へとシェアを広げるために、PRを有効活用した

 そもそも「ブランドコミュニケーション」とは何をすることか。「ブランドとは企業と顧客との接点を通して、顧客に評価され、顧客の頭の中に蓄積されていく価値」だ。第5回で解説した「ブランドの提供価値」を明確にしたうえで、その提供価値をどのように顧客に伝えていくかを考え抜かなければいけない。

 ブランドコミュニケーションは、顧客とのさまざまな接点の中で「認知」「理解」「好感」「共感」「愛着」という5段階で、徐々にステップを踏んでブランドの提供価値を伝えていくことがポイントだ。まずはブランドを認知してもらわないと、何も始まらない。気を付けるべきは「統一感」だ。それぞれの受け手が異なった認識でブランドを認知するという事態があってはいけない。送り手側がチャネルごとにバラバラのコミュニケーションをしていると、そのようなことが起きがちだ。

 統一感というとWebサイトやカタログなどのデザインをはじめとした、視覚的な統一感のことだと思われがちだが、それだけではない。ブランドとしての考え方や一つひとつの言葉、従業員の振る舞いまで、あらゆる顧客とのタッチポイントでブランドらしさの軸をぶらしてはならない。

ブランドコミュニケーションにおいては、あらゆる顧客とのタッチポイントで統一感のあるコミュニケーションをすべきだ
ブランドコミュニケーションにおいては、あらゆる顧客とのタッチポイントで統一感のあるコミュニケーションをすべきだ

 例えば、高級ホテルがどれだけ素晴らしい客室や空間を提供していたとしても、もし従業員が清潔感がないスーツを着ていたり、品のない言葉遣いをしていたりしたら、イメージが崩れてしまうだろう。これはBtoB(企業向け)でもBtoC(消費者向け)でも同様で、統一されたイメージを社内外でコミュニケーションし続けることでブランドらしさが生まれていくのだ。

BtoBはPRによる集中的な認知活動が有効

 さて、ブランドコミュニケーションには大きく分けて、社外に向けた「アウターコミュニケーション」と、社内に向けた「インナーコミュニケーション」の2つがある。アウターコミュニケーションは、顧客や株主、取引先など、対外的に行う施策で、ブランディングというとこちらの印象が強いのではなかろうか。

 BtoB企業がアウターコミュニケーションを実施する場合、注意すべきなのは対象層の明確化だ。飲料や家電といったBtoCのナショナルブランドと異なり、BtoBは顧客の対象層が限られている。そのため、できるだけ多くの人に広まるようにやみくもに広告を打つのではなく、どこがKSF(キー・サクセス・ファクター=事業成功に必要な要因)なのかを把握し、集中的に認知活動を行う必要がある。

 このKSFを把握しない限りは、いくらコミュニケーションを行っても正しい見込み顧客にアプローチできず、徒労に終わる。BtoB企業の中にはテレビCMを放映している企業もある。テレビCMは広く認知を取る典型的なマスコミュニケーションだが、その目的は、株式公開企業が会社としての認知を上げることで株価を上げる、株を買う投資家が増える、知名度が上がって採用活動がスムーズになるなど、直接的な事業メリットとは異なることが多い。また、そのメリットがコストを上回っているから実施する意味がある。

 直接的な事業メリットを狙う場合、BtoBのアウターブランディングで特に重要なのは「PR活動」だ。「PR」と「広告」が異なる点を改めて整理すると、PRはプレスリリースなどを出すことにより、第三者である媒体社などに取り上げてもらうのが狙いだ。第三者が語るからこそ、広告より信頼度が高い傾向にある。

 PRの場合は、記者が数多くの情報の中からえりすぐって、読み手にとって利益のある内容を取り上げる。その記事がきっかけで読者が増えたり、Webサイトのアクセス数が上がったりしないと意味がないので、読者にとってベネフィットがなければ書かれることはないと考えていい。

 記事を書いてもらうには、何よりまずは記者に自社の情報を知ってもらう必要がある。しかし、多くのBtoB企業はプレスリリースさえ出していない。リリース配信サービス「PR TIMES」などを活用し、リリースを配信するだけで、情報が伝わる可能性が高められる。

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