倒産危機から一転、リブランディングで復活を遂げたリフレクターブランド「Ref Lite(レフライト)」。同ブランドを例にBtoB企業のブランディングの成功法を解説する本連載の第5回目は、ブランドが提供すべき「情緒的価値」と「機能的価値」という2つの提供価値(ベネフィット)の定め方を学ぶ。

ブランドの提供価値は大きく2つに分けて設定すべきだ(写真/Shutterstock)
ブランドの提供価値は大きく2つに分けて設定すべきだ(写真/Shutterstock)

 本連載ではこれまで「自社(Company)」「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」という、3つのCの分析法について書いてきた。各回では自社の強みを明確にして、顧客の潜在的にあるニーズ(インサイト)を見つけ、さらに競合と差異化する方法を解説した。今回は、それらのうちCompanyとCustomerという2つのCが重なり合い、なおかつCompetitorが重ならない部分、すなわちブランドのコアバリューとなる「提供価値(ベネフィット)」の定め方をお伝えしよう。

3つのCから導き出されるブランドの価値

 まず、「あなたの会社が顧客に提供しているものは何か」を、今一度考えてみてほしい。主力製品を答える企業が多いはずだ。靴のソールメーカーであればソール、半導体メーカーなら半導体といった具合だ。その回答は、間違いではない。ただ、顧客が求めているのは、製品そのものではないことが多い。ソールなら「足への負担軽減」かもしれないし、半導体なら「正確でスピーディーな処理」を求めている可能性がある。

 「ドリルを売るには穴を売れ」という、有名な言葉がある。本質的に顧客が求めているのはドリルというモノではなく「穴」という価値だという意味を指す。ドリルは「穴を開けるための手段」でしかなく、売り手は、買い手がどんな穴が開けられれば満足できるのかを考える必要がある。ところが、メーカーはドリルの特徴を説明することばかりに必死になりがちだ。しかし、ブランディングにおいては「ブランドが顧客へ提供する価値は何か」「顧客が得るベネフィットは何か」の明確化が不可欠になる。

 さて明確化するうえで、役立つのが3つのCだ。自社の強みと顧客インサイトが重なり合い、かつ競合の強みが重ならない部分がブランドの提供価値になる。顧客が抱えている課題、いわゆるペインポイントに対して、自社の強みがその解決手段になり、さらに競合他社が提供できない価値となればブランド価値はより大きくなるからだ。

「自社(Company)」「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」の3つのCの重なり合う部分が、ブランドの目指す姿、すなわちブランドの提供価値になる
「自社(Company)」「顧客(Customer)」が重なり合い、かつ「競合(Competitor)」が重ならない部分が、ブランドの目指す姿、すなわちブランドの提供価値になる

 この提供価値を明確にすることで、競合との差異化が可能になる。ブランドが提供する価値は「機能的価値」「情緒的価値」という大きく2つある。機能的価値とは耐久性など、製品が持つ、具体的な機能的特徴やスペックを指す。数値化が可能で製品の優劣が分かりやすいため、多くの企業が機能性の高さを追求し、ブランディングでも強調しようとする。しかし顧客は、決してこの機能的価値だけで商品を選んでいるわけではない。数値の優劣ではなく、情緒的な理由で選ぶことがいくらでもある。

 例えば、スターバックスコーヒーが提供する「第三の場所(サードプレイス)」は、情緒的価値の代表例だ。おいしいコーヒーを提供するチェーン店という機能的価値に加え、家庭でもなく、職場でもない、くつろげる居心地のいい第三の場所という情緒的価値を提供する。これこそが提供価値で、他社との強い差異化要因となっている。

 BtoBブランドでもこうした観点から提供価値を定めることが重要だ。この提供価値の見定めにおいて、レフライトのリブランディングを担っているMipoxの既存事業の知見が生かされている。同社は研磨フイルムをはじめ、液体研磨剤や研磨機械など、研磨に関する製品を主力として販売するメーカーだ。

 ところがMipoxは、自社を「研磨剤メーカー」とは定義していない。同社の渡邉淳社長は「我々の顧客が求めているのは、当社の研磨材料を使用して仕上がった、鏡面に近い表面。それが顧客にとってのベネフィットだ」と語っている。つまり、顧客にとってのベネフィットは「鏡面のように仕上がること」であり、研磨材そのものではない。

 それを理解しているがゆえに、「我々は研磨屋ではない。顧客が満足いく表面が仕上がるための仕組みを提供することが重要だ」(渡邉氏)と言う。こうした同社の提供価値が業界に広がっているから、営業などで売り込まずとも顧客のほうからMipoxを指名してくるそうだ。この認識や、第4回で紹介したニッチ分野で勝負するという戦略が組み合わさることで、Mipoxは「グローバルニッチ」という独自の立ち位置を確立し、大手企業との競争でも戦えている。

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