倒産危機から一転、リブランディングで復活を遂げようとしているリフレクターブランド「Ref Lite(レフライト)」を例に、まだまだ重要性が浸透していない「BtoB企業や中小企業のブランディング」について解説する本連載。第3回は「顧客のインサイト」について解説する。レフライトをファッション業界に売り込む上で、対象顧客をデザイナーに定めたのはなぜだったのか。

(写真/Shutterstock)
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 インサイトとは「まだ顕在化されていない、潜在的な顧客のニーズ」を指す。つまり、対象となる顧客本人も気付いていないニーズだ。顕在化されたニーズであれば競合もすでに気付いている場合が多く、その領域はすでに競争が激しいレッドオーシャンとなっている可能性が高い。競合との差異化を図る上では、まだ競合も気付いていないインサイトを探し出し、他社が入り込めないような参入障壁をいち早く築くことが、勝利の要諦となる。

 初めに考えるべきは「本当の顧客」は誰なのかということだ。BtoBブランディングにおいて、いったい誰のインサイトを探ればよいのだろうか。つい自社ブランドの売り込み先である営業先のことばかり考えてしまうが、これは戦略の誤りにつながりやすい。BtoBといいながらも、間に企業がいくつか入って「BtoBtoB」となったり、インテルのプロセッサーのように最終的になんらかの形で消費者に届く場合、「BtoBtoBtoBtoC」のような複雑な形になったりする場合もある。そうなると、結局誰が顧客で、誰のインサイトを探るべきかを見失いがちだ。営業が訪問する営業先が、本当の顧客とは限らない。

 例えば、営業先が購買担当や販売代理店の場合、彼らのニーズを探ったところで、大概は「良い品質で、納期を守り、価格を抑えてほしい」という答えが返ってくるだけだ。この答えを真に受けて価格勝負を始めたならば、値下げ合戦、つまりレッドオーシャンに突入してしまう。これは避けなければならない。だからこそ、誰が真のニーズを持っている、本当の顧客なのかを明確に探す必要がある。自社ブランドとしても、この本当の顧客から指名買いされる状況をつくることで、営業活動も格段に楽になる。

顧客分析における「本当の顧客」とは誰か

 だから顧客インサイトを探る場合、「本当の顧客(キーとなる顧客)」を明確にする必要がある。BtoBブランディングにおける本当の顧客とは、そのビジネスフロー全体におけるキーとなる人(企業や組織の場合もある)で、何かしらの重要な決定に一番影響を与える人のことを指す。それは必ずしも決断を下す責任者とは限らないことも注意が必要だ。

 これを踏まえ、レフライトのケースを見ていこう。第2回の現状分析の結果から、従来のワークウエア向けからファッション分野向けへとシフトしようと考えていた当初、生地問屋や商社、アパレルメーカーを顧客だと考えていた。

 しかし、一番影響力を持つ本当の顧客は「デザイナー」や「商品の企画担当者」だったのだ。分析の過程で商品に使う素材など、洋服の仕様を決める際、彼らの影響が強いことが判明した。デザイナーが生地のブランドを指定した場合、メーカーや代理店はその意向を尊重する傾向があったのだ。決定権のある人物を押さえることの重要さが伝わるエピソードだろう。

従来、生地問屋、商社、アパレルメーカーを顧客と思い込んでいたが、ファッション商材の素材を決める上でのキーパーソンはデザイナーや商品の企画担当者だった
従来、生地問屋、商社、アパレルメーカーを顧客と思い込んでいたが、ファッション商材の素材を決める上でのキーパーソンはデザイナーや商品の企画担当者だった

 ここから、問屋やメーカーなど従来の営業先に加え、本当の顧客であるファッションデザイナーに選ばれるブランド戦略に最も力を入れるべきだと考えた。実は、競合となる世界最大手のリフレクターメーカーのスリーエム(3M)との戦いを熟知し、レフライトを支援したMipoxの強さがここに表れている。

 市場で優位に立っている製品の多くは本当の顧客と共同で開発を行い、彼らが何を求めているかを事前に察知し、そこに合った製品を開発し続けているのだ。常にブランドの指名買いをされる状況をつくり出してきたMipoxのやり方は、レフライトにも応用できると考えた。

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