連載第1回は、なぜBtoB(企業向け)事業会社にブランディングが必要なのかを説明した。今回からは倒産の危機にひんした中小BtoBブランドである「Ref Lite(レフライト)」が事業譲渡先のMipoxの支援の下、リブランディングによってどのように復活していったのか、実例を基にひも解いていく。徹底したブランド分析により、最大の競合であるスリーエム(3M)に勝てる3つの強みを見つけ出した。
ブランディングを行うためには、まずは現状を把握することが第1歩となる。「自社(Company)」「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」の3Cの視点で、できるだけ客観的に事実を把握することに努める。自社の強みは何で、何を顧客に訴えたいのか。顧客は何を求め、どんなインサイトがあるのか。競合と差別化できることは何かといった具合だ。
ここで注意すべきことは、3C分析は単なる3項目の穴埋め作業ではないということだ。それぞれのCを分析し、事実を把握したら「自社と顧客の視点」「顧客と競合の視点」「自社と競合の視点」のように、さまざまな角度から見直し検証することで新しい発見がある。例えば、自社の強みを考えるにしても、自社から見た強みだけでなく、顧客から見た強み、競合から見た強みという視点を加えることで、新たな強みの発見につながる。
それぞれの分析には顧客満足度調査も積極的に行う。予算があれば調査会社を使って本格的に実施したいところだが、中小企業などは予算が限られている場合が多く、なかなか難しいこともある。そういう場合は自社のリソースを最大限活用するとよいだろう。自分たちで調査シートを作成し、顧客に自らアンケートを依頼することもできなくはない。やらずに自分たちだけで考えているよりは、どんな手でも打ったほうがより良い結果につながるはずだ。
ではレフライトではどのように現状把握を行ったのだろうか。多くの中小企業同様、大手企業ほどの予算はなかったため、大掛かりな調査は行っていない。想定顧客への聞き取り調査や、営業担当による徹底した競合調査、自社内でのワークショップなど、まさに自社のリソースを活用したものだ。
約10社の顧客が、どの企業にどのくらいのボリュームで自社製品や競合製品を発注しているのか。レフライトの不満点は何か、その不満点は競合についても共通なのか、決定要因はどこにあるのかなどを尋ねた。それらを総合すると、「今の分野で価格勝負をするより、新しい分野に攻めていくべきだ」という仮説を導き出すことができた。
次に「自社の強みの分析法」だ。ブランディングにとって、自社が持つ独自性や、それを貫く意志は非常に重要だ。だからといって、思いが強すぎるあまり、独りよがりになってもいけない。では何が重要かといえば、自社の目線に加え、他者から見た目線の両面から強みを冷静に見ていくことだ。
自社の強みを分析するには、まずは自社でワークショップを行い、徹底的に議論する。その次に、自社の強みについて社外の意見を聞こう。顧客、直近の転職者、家族、外部コンサルタントなど、どのような人でもいい。そのうえで、「もし自分が顧客だったら」「もし自分が競合にいたら」など、自分自身の思考の枠を自社から外し、顧客や競合になりきって考えることで、新しい視点が生まれてくるはずだ。
自己分析で分かったレフライトの3つの強み
レフライトも例外ではなく、顧客や競合の視点で自社を改めて見直すことで、自社では気付いていなかった強み、すなわち「盲点」の領域を見つけることができた。それまで自分たちが当たり前だと思っていた単なる1つの事実が、競合他社の視点で見ると、とてつもない強みだったということがいくつも判明した。ここでレフライトが見つけた「当たり前だと思っていたが、実はすごかった自社の強み」をいくつか紹介したい。
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