「ブランディング」と聞くと「大企業だけがやるもの」「BtoC(消費者向け)ブランドが行うもの」というイメージはないだろうか。そう思っていると、大きな機会損失をしている可能性が高い。この連載では、リブランディングによって、倒産の危機から脱したBtoB(企業向け)ブランドを題材に、BtoBブランド再生の極意を伝える。少額予算でも勝てる、BtoBブランドの再生術だ。
「ブランディングなんて、ロゴやデザインを変えるだけだろう」「BtoB企業にブランディングなんて必要ない、意味がない」。BtoBブランディングという言葉を耳にし、そう反応するのは早計だ。
製造業をはじめとするBtoB企業は「顧客はスペックが高ければ買ってくれる」「お客さんが求めているのは、品質の良さと価格の安さだ」と思われていることが少なくない。中でも高い技術を売りにするメーカーではその傾向が顕著だ。
しかし、不思議とそれでは説明がつかない事態に遭遇したことがあるはずだ。例えば、技術では勝っているし、価格面でも大差はないのに、有名な欧米製品が採用されて悔しい思いを味わったことはないだろうか。かつて「日本製」は大きな価値を持っていた。だが、もはやそれだけでは差異化にはつながりにくい時代だ。BtoBの世界でも選ばれるためのブランディングが重要になっているのだ。
ブランディングをうまく行っているBtoBブランドは身の回りだけでもいくつもある。例えば半導体素子メーカー「インテル」や防水透湿性素材「ゴアテックス」はその代表例だ。「インテル入ってる」というコピーで一世を風靡したインテルは、同社のCPUが使われていることが消費者のパソコン選びの決定要因になっている。登山用のレインウエアやアウトドア用品、シューズなどで使われることが多いゴアテックスは、BtoBブランドでありながらゴアテックス製であることで、消費者から指名買いされるほどのブランド力を持っているから多くのブランドが素材に採用する。
各企業が技術力を高めてきた結果、「他社に比べて圧倒的に技術に優位性がある」という技術の違いがさほどなくなってきた昨今、どのような企業が選ばれるかといえばブランド力が高いほうだ。現代において、BtoBにとってブランディングは選ばれるために何より重要なのである。
BtoBもブランド力が顧客の選択を左右する
ここで1つ皆さんに質問したい。もしあなたがメーカーの購買担当で、2社のサプライヤーのうち1つを選定しなければいけない状況だったとする。もし、品質も価格も、条件がほぼすべて同じだったら、あなたはどちらを選択するだろうか。
1.「ゴアテックス」の生地素材
2.「無名メーカー」の生地素材
恐らく多くの読者はゴアテックスを選ぶはずだ。
ではゴアテックスを選んだその理由は何だろうか。人によって異なり「防水性が優れているから」「品質が良いと思うから」という機能的な側面を挙げる人もいれば、「よく知っていて安心」「信頼がある」「快適だから」など、情緒的な側面を挙げる人もいるだろう。
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