お客をつかむ“技ありパッケージ”

環境への配慮から、紙製のパッケージが見直されている。プラスチック製のパッケージを紙製に切り替えるメーカーも増えつつある。ただ、紙を使うメリットを生かし、デメリットを最小限に抑えるには、知識と技術が不可欠だ。

大阪城天守閣のミュージアムショップで販売している消しゴム「大阪城金虎消しゴム」。消しゴムのスリーブの絵柄は表裏で異なる。金の箔押しで細密に表現した絵柄のモチーフは、天守閣外壁に設置されている虎のレリーフ「伏虎」と「天守閣」。価格は1個350円(税込み、以下同)
大阪城天守閣のミュージアムショップで販売している消しゴム「大阪城金虎消しゴム」。消しゴムのスリーブの絵柄は表裏で異なる。金の箔押しで細密に表現した絵柄のモチーフは、天守閣外壁に設置されている虎のレリーフ「伏虎」と「天守閣」。価格は1個350円(税込み、以下同)

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 そんな中、30年以上前から「Design×Printing=GRAPH」というコンセプトを掲げ、デザインで印刷物の価値を高めることを目指しているのが、GRAPH(兵庫県加西市)だ。GRAPHの祖業は印刷業で、現在はデザインやブランディングをはじめ、商品開発や印刷・加工などのものづくりまで一貫して手掛けている。

 紙製のパッケージも数多く開発している。GRAPHが最も得意とするのが、アーティスティックなデザインと、職人が手作業で印刷や加工を施したようなアナログな表現の掛け合わせ。特徴は、その多くが大量生産できるように、デジタルで綿密にデザインしていることだ。独創的なパッケージデザインでありながら、コストにも目配りをして設計されている。

 例えば、平等院(京都府宇治市)や大阪城天守閣(大阪市)、二条城(京都市)などのミュージアムショップでお土産として販売している「消しゴム」のスリーブケースや、脱サラファクトリー(兵庫県洲本市)の手作り塩「五色の浜雫 自凝雫塩RARE SALT(おのころしずくしお)」の外箱、小牧醸造(鹿児島県さつま町)の麦焼酎のラベルなどに施している繊細な絵柄入りの金や銀の箔押しは、彫刻版をデジタルデータで制作している。

輸送用の箱は、蓋を開けるだけで販促用の什器(じゅうき)になる。消字率97%という消しゴムの性能を「めっちゃ消える」というくだけたコピーでアピール
輸送用の箱は、蓋を開けるだけで販促用の什器(じゅうき)になる。消字率97%という消しゴムの性能を「めっちゃ消える」というくだけたコピーでアピール
「五色の浜雫 自凝雫塩RARE SALT(おのころしずくしお)」。淡路島の海水のみで手作りしている過程で、わずかに採れる希少な大粒の塩。特別な商品であることが一目で伝わるように、海からイメージした波や渦などの絵柄や、オリジナルの模様入りの金の箔押しをふんだんに施した。75グラム1165円
「五色の浜雫 自凝雫塩RARE SALT(おのころしずくしお)」。淡路島の海水のみで手作りしている過程で、わずかに採れる希少な大粒の塩。特別な商品であることが一目で伝わるように、海からイメージした波や渦などの絵柄や、オリジナルの模様入りの金の箔押しをふんだんに施した。75グラム1165円
小牧醸造の麦焼酎「一尚 麦」。ラベルの銀の箔押し部分をよく見ると、麦の絵柄と「komaki mugi」というローマ字がちりばめられている。1800ミリリットル2530円
小牧醸造の麦焼酎「一尚 麦」。ラベルの銀の箔押し部分をよく見ると、麦の絵柄と「komaki mugi」というローマ字がちりばめられている。1800ミリリットル2530円

 GRAPHオリジナル商品の「箸袋」は、木版画を和紙に刷ったような質感だが、オフセット印刷だ。「箸袋にはあえて版ズレが起きやすい平滑性の低い紙を選定したり、インクの調合や印刷機なども調整したりして、アナログなイメージに近づけた」とGRAPH代表の北川一成氏は話す。

GRAPHオリジナル箸袋。縦長の紙を2つに折り、箸を差して使用する。オフセット印刷で木版画を和紙に刷ったような仕上がりを目指し、製版やインクなどを細かく調整している。80枚セット1540円(箸は除く)
GRAPHオリジナル箸袋。縦長の紙を2つに折り、箸を差して使用する。オフセット印刷で木版画を和紙に刷ったような仕上がりを目指し、製版やインクなどを細かく調整している。80枚セット1540円(箸は除く)

高度な印刷加工で知財を守る

 箔押し用の彫刻版をデジタルデータで制作すること自体は、特別なことではない。ただ、細かいラインや陰影も忠実に再現するのは難度が高い。GRAPHには長年にわたり蓄積してきた技術があるため、時間的にも経済的にもロスが少なく、コストを抑えることができるという。

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