
SNSの影響力が増し、SDGs(持続可能な開発目標)への対応も迫られる。そんな時代のパッケージデザインの難しさとは……。30年間パッケージ専業のデザイナーを続ける三原美奈子氏と、インハウスのプロダクトデザイナー、佐々木拓氏、フォトディレクションも手掛けるアートディレクターの清水彩香氏の3人が、異なる視点からパッケージデザインについて語った。
──これまでに手掛けたパッケージデザインについて教えてください。
三原美奈子氏(以下、三原) 牛乳石鹸共進社(大阪市)の「スキンライフ」シリーズは、2回のパッケージリニューアルを含めて担当してきた商品です。約30年間パッケージデザイン専門で、食品や化粧品、雑貨を多く手掛け、大手メーカーと小規模事業者、どちらの仕事もしています。奈良のお米のパッケージは、予算が少なかったのですが、「時間があるときに自分たちでパッケージを組み立てられる」というクライアントだったので、ネット印刷でオーダーしたA3サイズの紙をカットして折ると出来上がる、小ロットかつ低コストなパッケージにしました。
佐々木拓氏(以下、佐々木) 先日、コクヨとUHA味覚糖(大阪市)とWhatever(東京・港)の3社で作ったのが、一定の時間で溶けるようにデザインされたミントタブレット「minute mint(ミニットミント)」です。タブレットの形状や、パッケージデザインを担当しました。時間を計るということで、道具らしいたたずまいにしたいと考えて缶を採用。2008年にコクヨに入社して、最初はオフィスや公共向け家具のプロダクトデザインをしていました。その後、商品や企業のブランディングに関わるグラフィックを手掛けるようになりました。パッケージは、プロダクトとグラフィックの中間のような分野。立体と平面を行き来するデザインなので、とてもやりがいを感じます。
パッケージの「見せ方」も手掛ける
清水彩香氏(以下、清水) 18年に立ち上がった日本茶ブランド「CHILL TEA」のパッケージは、海外で販売するうえで日本のものであると一発で認識できるように、喜多川歌麿の浮世絵を採用しています。それでいて、日本人にも受け入れられるように、渋い和の印象ではなくモダンな方向に持っていき、バランスを大事にデザインしました。私は、フォトディレクションまでセットで手掛けることが多いですね。どのように見せるか、伝えるかもパッケージデザインのうちだと捉えています。
三原 特に小規模事業者の場合には、新しいパッケージを作るだけで精いっぱい。フォトディレクションまでやる場合、その予算も確保しておく必要がありますね。
清水 CHILL TEAでは、もともとInstagramを運用していた予算内に収まるように、フォトグラファーの提案や運用マニュアルを作成することでクリアしました。クラフトジン「HOLON」の場合は、Webサイトでの使用を見越して写真を撮り下ろしています。
──どんな素材を使うか、どんな形状にするか、どのように決めるのでしょう?
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