お客をつかむ“技ありパッケージ”

森永製菓「もみもみホットケーキミックス」の2020年の売り上げが、巣ごもり需要を背景に大幅増となっていたことが分かった。卵や牛乳といったホットケーキ生地の材料をパッケージの中で混ぜ合わせ、フライパンに絞り出して加熱すればホットケーキを作れる商品。ボウルや泡だて器といった調理器具を用意したり片付けたりする手間が省ける点が受けた。

「もみもみホットケーキミックス」。内容量は120グラムで、2枚のホットケーキを作ることができる。発売後にパッケージを改良し、もみながらでも正面から中身の混ざり具合が見えるようにした。「かたづけラクちん!」の文字を入れるなど、旧パッケージと比べて、片付けの手間が省ける点も強調。裏面の説明文も工夫した
「もみもみホットケーキミックス」。内容量は120グラムで、2枚のホットケーキを作ることができる。発売後にパッケージを改良し、もみながらでも正面から中身の混ざり具合が見えるようにした。「かたづけラクちん!」の文字を入れるなど、旧パッケージと比べて、片付けの手間が省ける点も強調。裏面の説明文も工夫した

 手軽にホットケーキ作りを楽しめるとして18年から販売していたが、20年度の年間売上高は前年比約2割増。コロナ禍で20年4月に最初の緊急事態宣言が発令された後は一時品切れとなり、6月には前年同月比で約8割増となった。その後は落ちついたが、21年1月の2度目の緊急事態宣言の前後で再度、64%伸びた(21年1月の前年比)。

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 ホットケーキは市販のミックス素材の普及を通じて家庭に定着し、幅広く親しまれてきた。ロングセラー商品「森永ホットケーキミックス」を筆頭に、同社はホットケーキミックスの主要メーカーとして市場をけん引。18年4月から21年3月までの3年間はトップシェアを保持してきたという。

【特集】お客をつかむ“技ありパッケージ”

 同社の調査によると、もみもみホットケーキミックスの開発を始めた17年当時はホットケーキミックス市場が縮小傾向にあった。そこで新たな商品の開発が求められ、もみもみホットケーキミックスを投入した。約1年半の開発期間を要したが、パッケージを全面的に見直ししたため、もっと時間がかかってもおかしくなかったという。食品マーケティング部の山本愛氏は、「市場に対して起爆剤を投じるのはカテゴリーナンバーワンメーカーの責任。市場を早く盛り上げていかなければとスピード感を持って開発した」と語る。

ホットケーキミックス市場のメーカーシェア(2018年4月~21年3月 累計販売金額)
ホットケーキミックス市場のメーカーシェア(2018年4月~21年3月 累計販売金額)
ホットケーキミックス市場でのメーカーシェアは、直近3年間で37.7パーセントでトップを維持した。市場規模は、09年と比較して17年には4分の3に縮小した(森永製菓調べ)
ホットケーキミックス市場の伸長率(各年度4月~翌年3月。09年度=100%とした場合の伸長率)
ホットケーキミックス市場の伸長率(各年度4月~翌年3月。09年度=100%とした場合の伸長率)

手作りのハードルを下げる

 開発に先立ち、まずは1年以内にホットケーキを作った500~600人のユーザーを対象にウェブ調査を行い、気になる点などを聞いた。

 すると「調理に時間がかかる」を挙げる回答が目立った。「調理器具を準備しなくてはいけない」「洗わなければいけない」といった声も多かった。

 それらを解決できる商品を作れないか、袋の中で作れるピクルスやぬか漬けのようなパッケージの中で調理を完結できる商品はどうかなどとアイデアが広がり、開発が始まった。ユーザーに開発中の商品を渡し、作ってもらうというテストも実施。結果に基づいて商品の問題点や調理法の説明の仕方を改良したという。

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