「コロナ禍のスーパーで最も売り上げを伸ばした主要カテゴリーはビール、生菓子、スナックである」「すべてのチョコレート製品はバレンタインデーのある2月が最も売れる」……。真偽を問うこうした設問のクイズがあれば何と答えるか。答えは本文に記すが、実は、これらは年単位や月単位など“時間”でデータを比較すると、真実が見えてくる。ID-POS(ID付きPOS)などの購買データを使った分析を紹介する本連載の第7回(最終回)は、「5W1H」の中のWHEN(時間)に着目し、分析方法をひもとく。
本連載では、5W1Hに沿って、購買データを活用してマーケティングにつなげていく手法を紹介してきた。連載の最後として、「WHEN」、すなわち「いつ購入したのか」という“時間”をテーマに、データ分析を試みていきたい。
WHENを分析する際に重要なのは、時間の単位の設定だ。年といった大きなところから、季節性や月、日、曜日のレベル、さらには日の中でも午前、午後、夕方、夜など、様々な時間の粒度が考えられる。
例えば、2022年の今の時点で、これまでのコロナ禍の影響で売り上げが伸びた商品を探る場合は、年単位で期間を設定して分析することが有効となる。一方、季節性などある特定の時期に売り上げが大きく伸びる商品カテゴリーもある。代表選手がチョコレートだ。バレンタインデーがある2月は年間の中で最も売れる時期となる。だが、そうした中でも、バレンタインデーに関係なく、選ばれる商品はないだろうか。そんな疑問を解消するためには、月単位で売り上げを見ていくとよい。
また、同じ店舗でも、時間帯別に客層が変わるというのはよくある現象だ。都市郊外のスーパーでは、午前中から昼すぎまでは客の大半がシニア層、夕方にはパート帰りの人たち、午後7~8時過ぎは残業後の勤労者が多くを占めるのが定石といわれる。このようにWHENの粒度は様々であり、ビジネスの課題や目的に合わせて、最適な単位を用いて分析することが重要となる。
そして、粒度とともにもう一つ大事なことが、「比較対象」だ。仮に、スーパーである商品の前年比の売り上げが急激に伸びたとしよう。一見、その商品のカテゴリー全体が有望な市場かのように思えるが、それは早計だ。その商品がテレビCMやキャンペーンを打った個別要因による結果かもしれない。また、単にスーパーの客数が大幅に増え、売り上げ向上につながったのかもしれない。答えを探るには、競合商品やスーパー全体の同時期の売り上げと比べることが重要であり、このデータの比較こそが購買の変化の真の理由を知るのに大切なポイントなのだ。
WHENの比較で真の打ち手が見えてくる
早速、コロナ禍前後の購買傾向の違いを、WHENの大きなくくりである年単位のデータを使って見ていこう。コロナ禍によって人々の購買行動は大きく変わったというのは周知の事実だ。コロナ禍の最初期はマスクが極端に売れ、リモートワークが始まると、巣ごもりに備えてパスタや冷凍食品の購買が一気に上がった。さらに、緊急事態宣言によって居酒屋などで酒の提供ができなくなると、酒類の購買が増加するなど、時々刻々と消費は変わってきた。
では、実際の購買データを見た場合、コロナ禍前の19年とコロナ禍から1年たった21年では、どう変化したのか。全国のスーパーマーケットの購買データを集計し、21年の上位20位までをランキングしたのが次の表だ。
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