スーパーマーケットやドラッグストアを回遊しているうちに、「ついで買い」をしてしまうことはよくあるだろう。店舗にとっては売り上げを増やす一つの好機だ。購買データから消費者の行動をひもとく本連載の第5回は、「5W1H」のWHATの2回目として、併買されやすいパターンを見つけて売り場づくりや販促、商品開発に生かす複数同時併買分析に迫る。
前回は「WHAT」(商品)に着目し、1つの商品に対してどの商品が一緒に買われやすいか(併買されやすいか)をバスケット分析(同時併買分析)で見極め、販促策や商品開発に役立てていくアプローチを紹介した。今回は、WHATの2回目として、複数の商品カテゴリー同士で併買されやすいパターンは何か、さらには3カテゴリー以上で買われやすい組み合わせを分析していくことで、その結果をプロモーションや商品開発に活用する方法を見ていく。
最初に、前回の1つの商品に対する同時併買分析と、今回の複数の商品間での同時併買分析の違いについてレクチャーしておこう。前者を一言でいえば、「ある基準商品を購入している人が、一緒にどのような対象商品を購入しているか」を分析するものだ。基準商品をビール、対象商品をスナックとした場合を式で表すと、
となる。例えば、ビール購入者が100人、スナック購入者が50人、両方購入者が10人とした場合、「両方購入者10人÷ビール購入者100人=同時併買率10%」となる。ただし、基準商品をスナックとすると、「両方購入者10人÷スナック購入者50人」という式になり、同時併買率は20%となる。つまり、スナック視点で見た方が併買率は高くなり、ビールと絡めた販促ではより高い効果が望めると見えてしまう。このように基準商品をどちらにするかによって率が変わってくる点は、1つの商品の同時併買分析を行う上での注意点である。
一方、今回取り上げる複数商品間での同時併買分析は、基準商品をどちらかに設定するのではなく、「ある2つの商品が一緒に購入されることが多いか少ないか」を分析するものだ。同様にビールとスナックを例に式で表すと、
となる。それぞれ先述の人数を式に当てはめてみると、「両方購入者10人÷ビールまたはスナック購入者140人(ビール購入者100人、スナック購入者50人から重複する両方購入者10人を減じた数)=同時併買確率約7.1%」となる。この値はビールから見ても、スナックから見ても同じで、シンプルにビールとスナックが一緒に買われる確率は約7.1%と示せる。つまり、商品カテゴリー同士が「一緒に買われやすい」もしくは「あまり関係がない」とひと目で分かるようになり、結び付きの強さを客観視できる。
商品相関図で“ついで買い”が誘発できる組み合わせを探す
では、全国のドラッグストアにおける2020年10~12月の実際の購買データを基に、商品カテゴリー間の同時併買確率を見ていこう。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。