自社の商品はどんな目的で買われ、どのように利用されているのか。アンケートを取らずとも想定できる方法がある。それが「同時併買分析」だ。ID-POS(ID付きPOS)などの購買データを使った分析の基本を紹介する本連載の第4回は、「5W1H」の中の「WHAT」、何の商品と一緒に買われているかを分析する方法を解説する。
前回までは、購買データ分析の基本となる「5W1H」のうち「WHO」(顧客)に注目し、商品のトライアル率、リピート率を分析することで、売り上げの変化の理由やどのような世代に買われているのかを見極める方法を解説した。
続いて今回からは、「WHAT」(商品)に着目し、分析の方法をレクチャーする。ただ、商品といっても、自社商品の売り上げ動向を見るだけでは、「なぜ他の商品ではなく自社の商品が買われているのか」「購入後にどのように使われているのか」など、マーケティングに役立つデータは得にくい。ポイントは、他の商品との関係性から見ていくことだ。それによって、自社商品の特性が浮かび上がり、打つべき手が明らかになっていく。
他の商品との関係性を見るのに最も適している分析方法の一つが、「バスケット分析(同時併買分析)」だ。簡単にいえば、どのような商品と一緒にかご(バスケット)に入れられ、買われているのかを見るということ。その手法の中で有名な話が、昔から伝えられている「ビールとオムツ」の事例である。
ビールとオムツという一般的には一緒に買われそうもない商品が、実は同時併買される傾向が高かったという。調査をすると、乳児がいる家庭で父親が乳児用オムツを購入すると同時に、自分用にビールを買っていたことが分かった、という話である。
こうした現象が分かった場合、小売りの立場であれば、「オムツ購入者はビール10%オフ」など、同時併買を促すようなクーポンを配布し、これまで併買してこなかった父親に販促するというアプローチが考えられる。
ただし、重要なのはそうした併買クーポンを打つことだけではない。自社商品が他に比べてなぜ買われているのか、どんなふうに利用をされているのかが見えてくることこそが大事なポイントだ。ビールとオムツの例でいえば、店内でオムツを持って片手が塞がっていても、もう片方の手で持ちやすいようなパッケージのため買われているのかもしれない。あるいは、家庭内でオムツを交換する母親の前で飲んでも泥酔しすぎない特徴が受けているのかもしれない。そうしたことが分かれば、その後、自社商品のブランディングやターゲティングなど、商品の本質的な検討ができるようになる。これが同時併買分析の肝なのである。
「リフト値」で意味のある併買を抽出
同時併買分析の具体的なやり方を見ていこう。基本的な方法は、基準となる商品(基準商品)の購入者が、他の商品(対象商品)を一緒に購入する確率を算出し、それが多いか、少ないかで見ていく。算出式としては、「基準商品と対象商品を同時に購入した人÷基準商品を購入した人」となる。これを、「同時併買者比率」と呼び、この率が高い対象商品は、基準商品と同時に購入される確率が高い商品ということになる。
あるビールブランドを基準商品として、どのようなカテゴリーの商品と一緒に買われることが多いのか、算出したのが下のグラフだ。最も同時併買者比率が高いカテゴリーはリキュール類で、スナック、ビール、スピリッツ、炭酸フレーバーの順となっている。
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