トライアル率とリピート率。購買データ分析でよく使われるデータだ。だが、読み解き方には注意が必要だと、購買データの解析サービスを展開するTrue Data(東京・港)のデータアナリスト、烏谷正彦氏は話す。ID-POS(ID付きPOS)などの購買データを使った分析のいろはを解説する本連載。第2回は、「5W1H」の中の、購入する人(WHO)に着目した分析の仕方を伝授する。
<前回(第1回)はこちら>消費者の行動を読み解く最も基礎的なデータが店舗での購買データだ。そのID-POS(ID付きPOS)などの購買データを、「5W1H」に沿ってひもとく本連載の第1回では、「WHY」に着目した。売り上げ分解ツリーを用いて、なぜ売り上げが上がっているのか、あるいは下がっているのかの要因を分析し、適切な施策を検討するための方法だ。続く今回の第2回は、「5W1H」によるマーケティングを検討する際、最も重要な要素となる「WHO」、すなわち購入する顧客にスポットを当て、データ分析のノウハウを解説する。
顧客のデータ分析は、古くから多くの方法が用いられている。例えば、消費者アンケートにより、自社と競合の商品に対して顧客がどのようなイメージを持っているかを分析する方法がある。また、購買データを活用するものとして、最も基本的なのが「属性分析」だ。自社と競合の商品について、顧客の性別や年代などの属性を比較・検討するものである。こうした伝統的な手法は基本的な顧客像を把握するために、今も多くの企業で採用されている。
だが、アンケートや属性分析など昔ながらの方法だけでは、顧客像の把握が難しい場合もある。そこで試みたいのが、比較的新しい手法である、トライアル(初めて購入した顧客)とリピーター(繰り返し購入している顧客)を分けて分析し、その結果を基に対策を考えるアプローチだ。
まず、トライアル率の読み解き方から見ていく。トライアル率を見る際に多く用いられるのが「累積トライアル率」だ。発売されて以降、全ての来店者のうちその商品を購入したことがある人の割合を指す。同じ人が2回以上購入しても1人としてカウントされ、累積値が大きくなるほど市場に広まっているということがいえる。
上の図1は、ある商品が新発売されてからの累積トライアル率を月次で示したグラフだ。来店者全体の中での購入した人の割合のため、値としては非常に小さいが、当初0.0006%だった数値が月ごとに大きく伸長し、しばらく経つと0.006%と10倍になり、値をプロットして結んだ折れ線の上昇角度も急になっている。こうして月ごとにグラフの傾きが急になっていく、つまりトライアルする人の数が増えていくのが人気商品の特徴だ。
リピート率は購入者数との4象限でポジションを見る
次に、リピート率とは何か。その商品やブランドの購入者のうち、期間内に2回以上購入した人の割合のことである。商品によって集計期間は異なり、例えば菓子や清涼飲料などであれば1カ月以内に2回以上購入する人をリピーターとするのが一般的だ。一方、シャンプーや歯磨き粉のような日用品は、1カ月で消費しきれないケースも多く、3カ月以内に2回以上購入する人などと定義することになる。
ただし、単純にリピート率が高い=購入者数が多い商品ではない点に注意したい。このことは、リピート率と購入者数を一つのグラフにまとめると一目瞭然となる。
下の図2は、2017年5~7月における衣料用合成洗剤市場に関して、横軸を購入者数、縦軸をリピート率として代表的なブランドごとにプロットしたものである。点線はそれぞれ購入者数の平均、リピート率の平均を示しており、左下、左上、右下、右上の4象限のうちどこにプロットされているかによって、当該ブランドの市場で置かれているポジションが分かる。
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