
商品について画像とテキストを使って説明できる内容は限られるが、顧客の潜在ニーズをくみ取ったり、情緒的な価値をうまく表現したりしたネーミングは、それだけで豊かなコミュニケーションを実現できる。商品に対する顧客の関心を一気に高める要素となり得る。Twitterで話題となった「闇落ちとまと」はその好例だ。
フルーツトマトを生産、販売する曽我農園(新潟市)が、野菜の表面の皮の一部が黒く変色する生理障害「尻腐れ」が発生したトマトを「闇落ちとまと」と名付けて販売したところ、大人気となった。
2021年5月、Twitterに闇落ちとまとの紹介を投稿。すると、その日のうちに爆発的に投稿が拡散したのだ。問い合わせが殺到し、テレビや新聞、Webメディアなどが相次いで取り上げたことで、知名度が一気に高まったという。
【特集】ヒットするネーミング
尻腐れは、甘いフルーツトマトを生産する過程で一定数出てしまう。が、見た目が悪いだけで甘みは凝縮されている。投稿では、尻腐れしたトマトの見た目の「怖さ」を踏まえながらも、「並外れた資質を持ちながら暗黒面に落ちた」という人気映画「スター・ウォーズ」の主要な登場人物「アナキン・スカイウォーカー」の境遇に重ねて説明した着眼点もよかった。
コロナ禍を機にリブランディング
曽我農園が本格的にTwitterを始めたのはコロナ禍がきっかけ。曽我農園社長の曽我新一氏は、「Twitterでは、農業は未知の世界。(ユーザーにとって)非常に新鮮な情報として映ることが、この1年を通じて分かった」と話す。現在、闇落ちとまとの最初の投稿はリツイート数が8万回を超え、曽我農園のアカウントのフォロワーは1万6000人を超えている。
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