
多くの人が悩みを抱える睡眠。「質の高い眠り」を実現するために開発されたのが「ヒツジのいらない枕」をはじめとするシリーズ商品だ。クラウドファンディングを活用し次々に新商品を投入。シリーズ累計で3万個を売り上げた。その商品特性を単刀直入に伝えきるネーミングは、3つの要素からなるフレームワークから生まれた。
アウトドア商品や寝具の企画販売会社、太陽(東京・世田谷)の主力商品が、「ベッドに横たわり、ヒツジを数える間もなく眠る」という睡眠体験を売りものにした「ヒツジのいらない」シリーズだ。数種類の枕とマットレスがある。消臭性のある活性炭を使用しており、寝具用品では珍しい黒色をしている。
第1作目である「ヒツジのいらない枕」は、クラウドファンディングのMakuakeで2020年8月にプロジェクトをスタートした。発表と同時に、世の中にないものや新しいものを求めているMakuakeサポーターたちの間で話題になった。20年9月には目標金額30万円のところを6000万円以上集めた。
20年10月に一般販売を開始。商品を届けてからは同サイトに好評価が集まり、商品の良さがさらに広まった。家族のために追加で購入するリピーターも多く、最高で5回もリピートしてくれる顧客もいたという。
21年3月に、シリーズ品として「ヒツジのいらないマットレス」のプロジェクトをスタートしたところ、開始後5分で目標金額(30万円)を達成し、30分後には200万円を達成した。
4月16日には「ヒツジのいらない枕─極柔─」のプロジェクトも開始。こちらも開始後30分で目標金額(30万円)を達成した。こうした各プロジェクトを加えて、シリーズ累計で約3万個を売り上げた(21年6月時点)。
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「睡眠時間をよりよいものにするために、寝ている8時間の間ずっと体をサポートしてくれる寝具を作ろうと考えた。一番取り組みやすい枕から研究開発をスタートした」(太陽代表取締役の川嶋伶氏)
ヒツジのいらないシリーズの最大の特徴が、TPE(熱可塑性エラストマー)素材を使用した「ぷにょんぽにょん」とした手触りだ。人間工学に基づいて作られた三角格子構造を採用し、頭部や体の形や位置に合わせてフィットする。柔らかすぎても硬すぎても体に負担がかかってしまうため、TPEに活性炭を練り込んで柔らかさを調節したという。活性炭は、汗臭や加齢臭を吸着する機能もある。
枕では、格子点で頭を支えることで、包み込むような感覚とスムーズな寝返りを実現した。マットレスの場合は、寝転んだ際に圧力がかかる部分を格子状にし、体全体の体圧を分散できるようにした。
ネーミングのフレームワーク
ヒツジのいらないシリーズのネーミングを考えるうえで最も意識したのが、「良く眠れることを伝える」こと。「快眠」「安眠」といった分かりやすい言葉を使う手もあるが、言葉を聞いただけで「この枕を使うことで納得できる感覚が味わえる」という強いイメージが湧くことが大切だと考えた。
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