
2020年7月、富士通デザインセンターの発足と同時期に立ち上がった「決裁システムリニューアルプロジェクト」は、デザイン思考を実践の場に取り入れた第1号だ。担当する法務部門がデザイン思考のやり方を身に付けながら、デザイナーと一緒にプロジェクトを推進。システムは21年10月から稼働予定だ。
デザインセンターを中心に、一般社員から幹部社員、経営層に至るまでデザイン思考の浸透に取り組んでいる富士通。デザイン思考の浸透において教育よりも実践を重視しているため、社内業務システムの開発もデザイン思考を身につけてもらうための重要な機会となる。
富士通で現在稼働している決裁システムは20年前に自社開発したもので、サーバーやミドルウエアの更新・更改タイミングを控えている。国内外のグループ会社をカバーしていない、決裁のスピードが遅い、添付ファイルに制限があるなど、さまざまな課題を抱えていた。そこでデザイン思考の手法で、グローバル共通の標準化した決裁システムにリニューアルすることに決めた。
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プロジェクトを担当する法務・知財・内部統制推進本部コーポレートガバナンス法務部シニアマネージャーの堀川剛史氏は、開発に当たってデザインセンターのデザイナーをコアメンバーとして招へい。早い段階からデザイナーに参画してもらった。「自分たちだけだと、リニューアルしても代わり映えのない決裁システムができるのでは、という危機感があった」と堀川氏はデザイナーを引き入れた理由を明かす。
同プロジェクトはコーポレートガバナンス法務部やデザインセンターに加え、人事や財務・経理の担当者、各事業部門の代表者、デジタルシステムプラットフォーム本部の担当者など計50人で構成する。
今回サポート役となったデザインセンターのフロントデザイン部部長の内田弘樹氏は「システムがアジャイル開発で行われるようになると、我々がずっと絡めるわけではない。デザイナーがいなくてもデザイン思考でプロジェクトが自走できるよう地盤をつくることが重要だと考え、デザイナーが出過ぎることがないように心がけた」と言う。
若手社員が役員にインタビュー
デザイン思考で重要となるユーザーインタビューも行った。デザインセンター戦略企画部シニアエキスパートの松本啓太氏は、「決裁システムに何を望むのか、それを探ることを目的に役員インタビューや現場の決裁者にアンケートを実施した」と話す。
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