
連結子会社であった富士通デザインを吸収合併し、2020年7月1日に発足した富士通のデザインセンター。センター長に就いた宇田哲也氏に、新しいデザインセンターの役割や求めるデザイナー像について聞いた。一番のミッションは「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進」にあるという。
富士通デザインセンター長
富士通では今、全社員へのデザイン思考普及活動に取り組むなどデザインが注目されています。デザインセンターの一番のミッションは?
「DX推進」です。その要素は大別すると、「UX連鎖のデザイン」と「コーポレートトランスフォーメーション」があります。「UX連鎖のデザイン」とは、アナログとデジタルをつないで一貫性のあるカスタマーエクスペリエンス(CX)を生み出すこと。
【第2回】 富士通のDX担当役員「デザイナーには企業変革のデザインを」
【第3回】 富士通社長も注目 組織力を高める「パーパス・カービング」とは
【第4回】 新生・富士通デザインセンター リーダーが語るDX推進の要諦←今回はココ
例えばコンビニの前にいるときに飲み物を買うという行為でも、実際にすぐ飲むために店に入って1本買うのをアナログだとすると、気に入ったから家用に10本まとめてオンラインで注文して配達してもらうのはデジタルです。そういったシーンごとに、デジタルとアナログの違いすら感じさせることなく、あつれきが起こらずかつシームレスに使い分けて必要なサービスを提供しながら、人々の生活に寄り添う体験の連鎖をつくることです。
コーポレートトランスフォーメーションとは?
これは組織の改革で、富士通全体をデザインセンターが主導してユーザーセントリックに変えていく取り組みです。全社員へのデザイン思考のインストールもこの取り組みに含まれますし、福田譲CDXO(最高デジタル変革責任者)補佐が推進する「フジトラ」もデザインセンターの活動の1つです。
これまでは、どの本部も事業部も自分たちの技術や思想を起点にしてものをつくっているところがあり、ユーザーの価値につなげることを起点にできていませんでした。それを改めるのが富士通のDXの出発点になっています。
マーケットインだと過当競争に巻き込まれ、プロダクトアウトだと時代の潮流に流されてしまいます。これからの富士通は、そのどちらでもないユーザーイン。お客さまの課題だから競争に巻き込まれることもありません。ユーザーを観察し、常にフィードバックしながら仮説検証を進めることで、かゆいところに手が届く、ユーザー第一主義を徹底していきたいです。
デザインを深掘りする「深化」と広げる「探索」を
デザイナーのポジションに変化はありますか?
発足1年目のデザインセンターは、社内の組織に対して援護射撃のような立ち位置で活動していましたが、さらにスピード感を持たせようと考え、発足2年目となる21年度は、各組織にデザイナーを異動させてデザインの効果をより直接的に発揮しています。例えば、富士通の営業スタッフはビジネスプロデューサーと呼ばれていますが、ビジネスプロデューサーとお客さまとの会議にデザイナーも参画し、共創に取り組みます。そうすることで、ユーザー体験をより意識したサービス、プロダクトに仕上がっています。
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