
「宇宙を解放する」。実は今、ソニーが人工衛星を打ち上げようとしている。特集最終回は、社員が自主的に研究開発をする、いわゆる「机の下活動」から生まれた斬新なプロジェクトを追う。破天荒なプロジェクトの誕生過程を探ると、イノベーションを生み出すヒントが見えてきた。さらに、宇宙でソニーが何をしようとしているのか、新ビジネス開拓の狙いも探った。
ボトムアップによる新事業開発の再活性化が、ソニー好調の背景の一つにあると、特集の第1回で取り上げた。2014年にスタートしたSAP(現SSAP:Sony Startup Acceleration Program)が象徴となり、現場の社員が自主的に行う研究開発「机の下活動」がさらに熱を帯びている。実はSSAPで事業化されたプロジェクトは氷山の一角。より草の根的な活動によって事業化が進んでいるものもある。
「宇宙を解放する」。こんなコンセプトで事業化が進む「Sony Space Entertainment Project(SSEP)」もその一つだ。
SSEPはソニーが東京大学と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で進めるプロジェクト。17年にソニーの有志社員が集まってブレストが始まり、社内外のさまざまなメンバーを集めながら企画を練り、20年春には「準備室」(現推進室)として正式スタート。同年8月には、ソニー・東京大学・JAXAで「宇宙感動体験事業」の創出に向けて共創契約を締結した。22年にはソニー製カメラを搭載した人工衛星を打ち上げ、リアルタイムに宇宙を撮影できるサービスを展開する計画だ。
宇宙開発事業──。ソニーの現在の主力6事業「ゲーム」「音楽」「映画」「エレクトロニクス(エレキ)」「半導体」「金融」から考えると、どれにも該当しないまさかの新ビジネスに見える。一般的には、このような破天荒な企画が通るとは考えにくい。では、なぜ事業化ルートに乗ったのか。それを探ると、イノベーションの新たな芽が生まれ、そしてそれが育つソニー流のポイントが見えてきた。
SSEPはどのようにして社内を通過したのか
ポイントをまとめる前に、まずSSEPが事業化を目指して動き出した経緯を見ていこう。
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