
エンターテインメントが稼ぎ頭となったソニー。だが、エレクトロニクス(エレキ)復活がなければ今の強さは生まれなかった。なぜソニーのエレキは復活しつつあるのか。その秘密は、万人受け狙いをやめ、濃いファンをつくること。ソニーのコア戦略「コミュニティ・オブ・インタレスト」を「α」「Xperia」「PlayStation」の現場から探った。
ソニーのエレクトロニクス(エレキ)事業が復活を遂げている。日本メーカーが家電事業を縮小する動きも目立つ中で、気を吐く。特集の第3回で触れたように、高付加価値モデルへの集中による薄利多売からの脱出に加え、「コミュニティ・オブ・インタレスト」と同社が呼ぶ戦略が実を結んでいる。
コミュニティ・オブ・インタレストとは、字義通りに訳せば、同じ興味や関心、趣味などを持った人たちの集まり。つまり、感動体験や関心を共有する人のコミュニティーを広げ、ファン度を高め、継続的に商品購入やサービス利用につなげていく戦略だ。長期的な視点で顧客のLTV(ライフ・タイム・バリュー、顧客生涯価値)を高めるという意味では、売り切りではなく継続して収益を上げる「リカーリングビジネス」の考え方にもつながる。昨今、顧客との継続的な関係から収益を得ることを重視するため、顧客満足度の向上を図るカスタマーサクセスの構築に取り組む企業は多いが、ソニーは「インタレスト(興味)」を組み合わせることで強いつながりを生んでいる。
2018年に復活したイヌ型ロボット「aibo」は、コミュニティ・オブ・インタレストとリカーリングの仕組みを合体させた象徴だ。ファンミーティングなどを通じてコミュニティーを醸成し、感動を共有したユーザーが仲間となっていく。また、aiboは購入費用に加え、月額課金のクラウドサービスを用意。関連グッズや新サービスの追加販売も組み合わせ、継続的な消費につなげている。
今回は、ソニー流のコミュニティ・オブ・インタレストの強みを探るべく、エレキの中核ともいえるデジタル一眼カメラの「α」、スマートフォンの「Xperia」、そして稼ぎ頭であるゲームの「PlayStation」、それぞれの取り組みに迫った。
【第2回】 1年で商品化 京セラ&ライオン&ソニーの共創商品開発の舞台裏
【第3回】 ソニーが63年ぶりに商号変更した理由 「聖域なき改革」の象徴
【第4回】 α、Xperia、プレステ ソニー3ブランドに学ぶファンの育成術←今回はここ
オンラインとオフライン、緻密な接点づくりでαファンを循環
まずは「α」を見てみる。デジタルカメラ、特にレンズ交換式カメラにおいては、絶対王者ともいえるキヤノンとニコンが君臨する中、後発で参入したソニー。不満の徹底的な聞き取り、サポートの拡充など、地道に製品・サービスを磨き、プロ層を開拓してきた。世界初のフルサイズミラーレス一眼カメラ「α7」や、超高速連写が可能な「α9」、フラッグシップ「α1」の投入により、プロ、セミプロ、ハイアマチュア層の取り込みに成功し、ミラーレス市場でトップシェアを得るまでになった。
徹底してプロを攻略したのに加え、秀逸なのがファンとの接点づくりの仕組みだ。
コミュニティーを構築する仕掛けは主に3つある。「αcafe(アルファカフェ)」「α Universe(アルファユニバース)」「αプラザ」だ。
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