ホテルや飛行機から、アミューズメントパーク、家電量販店まで――。需要に応じて価格を変える「ダイナミックプライシング」があらゆる分野に広がっている。その本質は何なのか。ホテル業界などにダイナミックプライシングのシステムを提供するメトロエンジン(東京・港)の小阪翔チーフデータサイエンティストが解説する。

 今、日本で「ダイナミックプライシング」が急速に広がっています。2018年以前は知り合いや友人に話をしようとしても、「ダイナミックプライシングというのは、価格が動的に変動することで~」と、言葉の説明からしなければなりませんでした。ところが、最近では、ダイナミックプライシングという言葉を聞いたことがないという人にはめったに会わなくなりました。

 しかし、よくよく聞いてみると、「ダイナミックプライシングってすごいらしいね」「あらゆる価格がダイナミックプライシングになっていくの?」など、世間の認識はやや浅いようです。まるで一時期AI(人工知能)がすべてを解決すると思われていたかのような万能感をダイナミックプライシングに対して期待されているようでもあります。

 さまざまなサービスがダイナミックプライシング化されていくターニングポイントである今、ダイナミックプライシングとは一体何なのか、世界をどう変えていくのか、今回の連載を通して理解を深めていただければ幸いです。

どのくらいダイナミックプライシングが広がっているのか

 「日本でダイナミックプライシングが急速に広がっています」と言いましたが、本当でしょうか。データで見ていきましょう。

Googleトレンドでみるダイナミックプライシングの注目度
Googleトレンドでみるダイナミックプライシングの注目度

 図は日本で「ダイナミックプライシング」という単語がGoogleでどのくらい検索されているのかを表しているグラフです。日本で大きな注目を集めたのは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市)が19年1月10日から価格変動制を導入することを発表したときでした。その後、立て続けにビックカメラやノジマなど家電量販店大手が価格変動制の導入を検討していることがニュースとなり、スポーツイベントやコンサートで続々とチケット料金がダイナミックプライシング化されるにつれ、世間で認知されるに至っています。

 最近では、国土交通省が鉄道運賃の価格変動制導入の検討に入ったり、河野太郎規制改革相がタクシー料金の規制緩和を国土交通省に要請したり、より公共インフラに近いサービスも価格変動制の動きを見せています。

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