SNSの普及により、生活者の情報発信力は大きく高まった。マーケティングやブランドづくりにおいては企業からの一方的な情報発信だけでなく、顧客と共に物語を共創する「ナラティブ」という発想が生まれている。今回はナラティブの専門書を発刊したPRストラテジストの本田哲也氏を迎え、企業はSNSをどのように「ナラティブ」と組み合わせていくべきか、企業コミュニケーションのこつについてnoteプロデューサーの徳力基彦が聞いた。

本田事務所代表 本田 哲也氏
本田事務所代表 本田 哲也氏
本田 哲也氏
本田事務所代表/PRストラテジスト
「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」にPRWEEK誌によって選出されたPR専門家。世界最大規模のPR会社フライシュマン・ヒラードの日本法人を経て、2006にブルーカレント・ジャパンを設立し代表に就任。『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』『ナラティブカンパニー 企業を変革する「物語」の力』など著作多数。国連機関や外務省のアドバイザー、Jリーグのマーケティング委員などを歴任。海外での活動も多岐にわたり、世界最大の広告祭カンヌライオンズでは、公式スピーカーや審査員を務めている。

徳力基彦(以下、徳力) 数年前から「ナラティブ」という言葉が、さまざまな分野でキーワードとなっていますね。まずは言葉の意味を教えてください。

本田哲也(以下、本田) ナラティブとは、物語的な共創構造のことで、ひらたくいうと、企業やブランドと生活者、あるいは顧客が、「共に紡ぐ物語」と定義しています。

徳力 「共に紡ぐ物語」という表現は少し抽象的なので、もう少し具体的に教えていただけませんか。物語を英語に直訳すると「ストーリー」になりますが、「ナラティブ」と「ストーリー」の違いは何でしょうか。

本田 違いは、「演者」「時間」「舞台」の3つにあると考えています。1つ目の「演者」の違いですが、これが一番重要だと思っています。コーポレートストーリーやブランドストーリーは、やはり企業やブランドが主役です。私たちの話を聞いてくださいと、どうしても企業発信の一方的な物語になってしまうのが、マーケティングにおける今までのブランドストーリーでした。

「ストーリー」と「ナラティブ」には「演者」「時間」「舞台」の3つに違いがある
「ストーリー」と「ナラティブ」には「演者」「時間」「舞台」の3つに違いがある

 「ナラティブ」は「共に紡ぐ」ということで、もう少し生活者、顧客側の物語であるというところに主眼を置いています。「壇上に企業がいて、聴衆は生活者です」という関係ではなく、全員が同じ場所に立って、一緒に話をつくっていこうよ、という感覚です。

 2つ目に「時間」の違いです。「ストーリー」は結局フォーマットなんですよね。基本的には起承転結があって、始まりと終わりがあります。一方、「ナラティブ」の概念はネバーエンディング。ずっと物語が続いていくんです。

 3つ目の「舞台」の違い。コーポレートストーリーやブランドストーリーは競合に勝ったとか、基本的にその企業が所属する業界や市場の中での話しが基本ですが、「ナラティブ」はみんなで紡いでいく物語です。おのずと舞台は世の中全体、社会全体になります。

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徳力 ナラティブとストーリーの違いが分かったところで、SNSを活用することで、ナラティブをどのように紡げるのか、具体的な事例を基にお聞かせください。

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