編集者の竹村俊助氏が代表を務めるWORDS(東京・港)はもともと書籍やWebの編集を手掛けていたが、2020年から「顧問編集者」を名乗り、経営者を主な取引相手とした新たな事業へとかじを切った。経営者が伝えたいことを、持ち前の編集スキルを生かして記事にして、コンテンツ配信サービス「note」やSNSを通じて世に広めるのが主な役割だ。noteプロデューサーの徳力基彦が、経営者の思いを世の中に伝わる文章に“変換”するためのポイントを聞いた。

竹村俊助氏
WORDS 代表取締役 竹村 俊助氏
竹村 俊助 氏
WORDS 代表取締役
ダイヤモンド社などを経て、2018年に独立。前田裕二著『メモの魔力』(NewsPicks Book)、高島宗一郎著『福岡市を経営する』(ダイヤモンド社)、佐藤可士和著『佐藤可士和の打ち合わせ』(ダイヤモンド社)など、数々のヒット作の編集・執筆を手掛ける。SNS時代の「伝わる文章」を探求中。自著に『書くのがしんどい』(PHP研究所)がある。ポテトサラダが好き

徳力基彦(以下、徳力) 竹村さんはご自身を「顧問編集者」と称していますね。顧問編集者としての仕事や役割などを教えてください。

竹村俊助氏(以下、竹村) 企業の経営者に話を伺って、それを分かりやすく、面白くまとめるのが「顧問編集者」の仕事です。

 実業家の(gumi創業者として知られる)国光宏尚さんのnoteを手掛けたのが、「顧問編集者」の仕事をするきっかけとなりました。国光さんが「FiNANCiE(フィナンシェ)」というWebサービスを開始するタイミングで、自分の考えや思いをしっかりとみなさんに伝える手伝いをしてほしいと相談を受けました。

 編集を手掛けた国光さんのnoteの記事には、3100を超える「スキ(noteの記事を評価するボタン)」(2022年5月30日現在)が集まるなど、大きな反響をいただきました。経営やビジネスの世界でも、編集力が求められていることを実感しました。

gumi創業者の国光宏尚氏のnoteで編集を支援したことが、顧問編集者という職種の原体験となったという
gumi創業者の国光宏尚氏のnoteで編集を支援したことが、顧問編集者という職種の原点になったという

徳力 2019年3月にこの記事を出したのは、まさにベストタイミングでしたね。国光さんはこの記事が出たことで、「Web3」の旗手としてのポジションを強めた印象があります。

竹村 もともと、国光さんの考えとこれまでの経歴は非常に興味深いものでした。僕はそれを、分かかりやすく整えて、文章にしただけです。

 経営者が社史をまとめたい、ビジョンを伝えたい、新しいサービスを提供するといったときには、分かりやすくまとめられた文章が重要になります。そのうえ、より多くの人に伝えようとするならば、その文章は読者が読みたいと思える内容になっていなければなりません。

 経営者の「伝えたい!」内容を、読者の「知りたい!」内容に変換して橋渡しするのが、顧問編集者の役割です。

顧問編集者は経営者の「伝えたい!」内容を、読者の「知りたい!」内容に変換して橋渡しするのが役割だ
顧問編集者は経営者の「伝えたい!」内容を、読者の「知りたい!」内容に変換して橋渡しするのが役割だ

 従来、編集者は放送局、出版社、ネットメディアなど、メディア側に属するのが一般的でした。経営者は取材をしてもらい、記事にしてもらっていたわけです。でもこのやり方では、メディア側の意図が強く反映されてしまい、本当に伝えたかったことを削られてしまったり、メディアが経営者の思いをくみ取り切れず、本来言いたかったことが伝わらなかったりすることが、起こり得ました。

 しかし、noteやTwitterなら、発信者側に編集者がつくことで、経営者は自分の思いの丈をコントローラブルな状態で発信できます。

徳力 具体的にはどのように編集を進めていくのでしょうか。

竹村 経営者が発信する目的を最初に伺い、方針を決めます。このときのポイントが、「何を言うか」の前に「誰が言うか」を固めることです。

 読者にとって、よく知らない人がいきなり自社サービスの紹介や組織論を語り出しても、興味を持ってもらいづらいですよね。なので、まずはその人が何者なのかが分かるような、自己紹介代わりになるコンテンツをつくります。

コンテンツをつくるうえでは、まず誰が言うのかを決めてから、最初の記事として対象者の自己紹介代わりになるコンテンツをつくる
コンテンツをつくるうえでは、まず誰が言うのかを決めてから、最初の記事として対象者の自己紹介代わりになるコンテンツをつくる

 月に2、3回、対象者を取材させていただき、言語化や思考の整理の手伝いをします。経営者がやることは、基本的に僕らの質問に答えることだけです。

 最初はビジネスモデルの話などはしません。「ご両親は何をされていたんですか」「子どもの頃は勉強できましたか」「部活は何をやっていましたか」など、その人の人生にフォーカスして質問していくのが、うちの特徴的なやり方です。

 どんな経営者でも、取材時は広報や秘書の方の立ち合いはご遠慮いただき、なるべくマンツーマンで話を聞きます。

 記事を読む人は、「経営者の話」が聞きたいわけではなく、「面白い話」「何か自分の役に立つこと」を知りたいんです。経営者の方の経験や考えにはそういったポイントが必ずあります。そうした情報はご本人が素の状態で話したほうが引き出しやすいんですね。

 その内容を、分かりやすく読者に伝えるのが僕らの仕事です。記事化してそれがバズったとしても、僕らがすごいのではなくて、経営者の本来の価値が読者にちゃんと伝わった結果にすぎません。

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