コロナ禍で多くの人の関心が向いた保険の一つが、「就業不能保険」だ。大けがや病気などで働けなくなったときに給付金を毎月受け取れるという性質の保険で、各社が近年力を入れている。選び方のポイントは、いざというときに給付金が受け取りやすいかどうか。2021年1月に改定し、給付条件が幅広い東京海上日動あんしん生命保険「あんしん就業不能保障保険 5疾病・障害・介護保障プラン」を大賞とした。

※日経トレンディ2021年5月号の記事を再構成

写真/Pcess609-stock.adobe.com
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 医療保険や死亡保険の影に隠れがちだが、実は入るべき優先度が高い保険がある。働けなくなったときに給付金を毎月受け取れる「就業不能保険」だ。

 通常、大けがや重病などで働けなくなった場合、最初の1年6カ月間は健康保険から傷病手当金(働いていた時の給料の3分の2程度)が支給される。しかし、実際に困るのはその後。障害がかなり重い場合は、障害年金の給付対象となるが、障害基礎年金は最も重度が高い障害に該当した場合でも年100万円程度(子の加算を除く)で、とてもそれだけでは生活できない。

 そこで、傷病手当金の支給が終わった後に、生活費を補填する保険金を給付するのが就業不能保険の主目的だ。給付条件は商品により異なるが、保険会社が独自に設定した基準と、障害年金など公的制度に連動する基準の2種類があり、保険会社によっては両者を組み合わせている。一般的に、独自条件による給付は支払い開始が早い。各社が設定する、入院、在宅療養といった所定の状態が、「60日」などの指定期間を超えて継続すれば受け取れる。

就業不能保険では、障害年金の障害等級や身体障害者手帳、要介護認定などの公的制度と連動して年金や一時金が給付されるタイプが多い。この他、保険会社独自の基準と組み合わせる場合もある。こちらは給付までの期間が短いメリットがある
就業不能保険では、障害年金の障害等級や身体障害者手帳、要介護認定などの公的制度と連動して年金や一時金が給付されるタイプが多い。この他、保険会社独自の基準と組み合わせる場合もある。こちらは給付までの期間が短いメリットがある

 公的制度連動の場合は、障害年金の障害等級や身体障害者手帳、要介護認定を基準としていることが多い。自分の障害がそれぞれの障害等級などに認定され、それが各社の指定条件に当てはまれば給付金が受け取れるので分かりやすい。一般的に障害年金の障害等級は2級以上、身体障害者手帳は3級以上を条件とする会社が多く、保険ジャーナリストの森田直子氏は「この2つは近い症状を示すが、障害等級2級の方が対象範囲は広い」と言う。最近では、身体障害者手帳の4級以下で給付される保険(特約)もある。

 障害年金の障害等級と身体障害者手帳で大きく違うのは、認定のタイミングだ。前者の認定が下りるのは、原則として初診から1年半後。一方、後者は早ければ1カ月程度、基本は3~4カ月で取得でき、給付金受け取りまでの期間が短くなる。ただ、身体障害者手帳は「症状の固定」が条件となり、状態が悪化し続けている途中では認定されないのが難点だ。

 いずれにせよ公的制度連動のみでは給付に時間がかかる可能性があるため、独自基準と公的制度連動の両方を給付条件に備えている商品がベターだ。

 ところで、病気になりにくい若年層では、相対的に精神疾患による就業不能のリスクが高いと言えるが、精神疾患への対応をうたう就業不能保険を選べばよいとは一概には言えない。障害年金の障害等級による給付条件が他の疾病より厳しく設定されていたり、給付回数に制限があったりする商品が少なくないからだ。基本的に精神疾患への保障を手厚くすると保険料が高くなりがちなため、慎重に検討したい。

 この他、「回復後の給付の有無」にも違いがある。一度給付が始まった後、仕事に復帰できたとき、あるいは障害状態から回復したときに、保険金給付が止まる商品と、出続ける商品の2種類があるのだ。仕事復帰時に給付金がストップする保険の場合「給付金が無くなるのは嫌だから、当面働かずにおこうという気持ちになりやすい」(ファイナンシャルプランナーの松浦建二氏)という。また、障害から回復して仕事に復帰した際に以前の収入に戻れる可能性は高くないので、保険料が多少上がってもよいなら保険期間満了まで給付され続ける商品の方が安心だ。

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