
スーパーシティに名乗りを上げた自治体の中で、ゼロから開発する「グリーンフィールド型」の代表格といえるのが、大阪府・大阪市の共同提案だろう。2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)の舞台となる「夢洲(ゆめしま)」、JR大阪駅北側の再開発エリア「うめきた2期」はどう変わるのか。大阪府CIO(最高情報統括責任者)・スマートシティ戦略部長の坪田知巳氏に話を聞いた。
「現状、住民がいないグリーンフィールドは関係者の利害調整がスムーズに進めやすい。スーパーシティの大胆な規制緩和によりスピード感を持って事業展開を行い、それを府内全域へ横展開していく」
そう語るのは、大阪府CIO・スマートシティ戦略部長の坪田知巳氏だ。大阪府・市は今回、2025年の大阪・関西万博の開催地となる大阪湾の人工島「夢洲」と、24年に先行まちびらきを計画する「うめきた2期」で、スーパーシティの指定を目指している。
夢洲では23年ごろから本格化する万博会場の基盤整備やパビリオンの建設において、先端テクノロジーを活用する方針だ。複数の建設会社や物流会社などが多数の担当工区に分かれて工事を実施していくのだが、共通のデータ連携基盤を整備することで作業の円滑化などを図る。
例えば、工事現場内外の人と物の移動を最適化する。夢洲は車両がアクセスできる入り口がトンネルと橋の2系統なので、各事業者がバラバラにプロジェクトを進めると渋滞が発生し、建設作業が滞りかねない。そこで、作業員の出退勤、物資運搬などのスケジュールをデータで管理し、ピークシフト誘導などができる体制を整える。
同時に、遠隔型自動運転ロボットを用いた物資運送、パーソナルモビリティやニーズに応じて適時配車されるデマンドバスの導入で効率化を進める計画。また、ドローンを活用し、測量や建設現場の見守りに役立てる。これらには道路法や道路運送法、航空法など複数の法規制が関わり、規制緩和を求める方針だ。
デジタルを活用して、工事に関わる作業員の安全、健康管理にも取り組む。個々のバイタルデータを取得し、熱中症の管理をすることや、建設現場での遠隔診療や遠隔投薬の実現も目指す。「まちづくりという意味では夢洲の構想は特殊だが、万博に向けての4年間はコンストラクションの街。そこでデータ活用を進め、万博後の夢洲のまちづくりにも生かしていく」(坪田氏)
うめきた―夢洲間で空飛ぶクルマ実現?
一方、うめきた2期ではエリア中央部に都市公園が整備される。それに関連し、IoTを活用して来街者に対して健康サービスを提供できるようにする構想だ。例えば、IoTデバイスにより公園での運動量を計測することや、取得したヒューマンデータとAI(人工知能)分析を基に温泉を利用した健康増進施設で健康プログラムを提供することなどが想定されている。ここでも鍵を握るのは、複数分野をつなぐベースとなるデータ連携基盤だ。
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