映画、書籍、雑誌にヒット続出 新キーワード「シスターフッド」(画像)

女性同士の連帯や絆を示す「シスターフッド」という言葉。起源は1960年代の女性運動の時代に遡るが、2018年ごろから日本でも主に映画批評などで使われ始め、特に20年以降、文芸誌からファッション誌まで様々な媒体が取り上げたことで認知度が拡大。ヒットコンテンツや社会の動向を読み解く新たなキーワードとしても注目を集めている。

※日経トレンディ2021年6月号の記事を再構成

映画や小説、漫画などエンタメコンテンツの新たなヒットの源泉になりつつある (c)Marvel Studios 2021
映画や小説、漫画などエンタメコンテンツの新たなヒットの源泉になりつつある (c)Marvel Studios 2021

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 「シスターフッド(sisterhood)」という言葉が、近年広く使われ始めたのはなぜか。前段として、映画作品において、ストーリー上で女性同士の関係を重視する作品にヒットが増加していた点が挙げられる。

 中でもとりわけ、『アナと雪の女王』(2013年)や『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15年)の成功の影響は大きい。ディズニープリンセスものでは従来、主に恋愛の成就を物語の結末としてきたが、『アナ雪』は姉妹の絆を描いて日本歴代興行収入4位を記録。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』もまた、既存シリーズでは男性ファンが多かったが、シャーリーズ・セロン演じる女戦士を中心に、女たちが立場や世代を超えて共闘するストーリーで男女問わず大ヒット。そうした作品を語る際の言葉として、「シスターフッド」は映画批評などの中から次第に定着していった。

シスターフッドブームの嚆矢となった「アナ雪」
シスターフッドブームの嚆矢となった「アナ雪」
『アナと雪の女王』の社会現象級メガヒットは、その後のエンタメ作品において女性同士の関係を重視する流れを作った。19年公開の続編もヒット (c)2021 Disney 独占配信のオリジナル作多数公開中のディズニー公式動画配信サービス「ディズニープラス」で配信中
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で物語の主軸となるのは、実は主人公のマックスではなく、女戦士フュリオサと彼女に連帯する女たちの闘いだ (c)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で物語の主軸となるのは、実は主人公のマックスではなく、女戦士フュリオサと彼女に連帯する女たちの闘いだ (c)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

 「小説でも、女同士の話で企画が通りやすくなってきた」と語るのは『完璧じゃない、あたしたち』(ポプラ社)や『ババヤガの夜』(河出書房新社)などで様々な女性同士の関係性を描いてきた作家の王谷晶氏。

 「以前だと数も少なく珍しかったので『やっぱり男女もので』と通らなかったり、通っても『一か八かやってみましょう』という感じだった。それが、最近はヒット作も出てきて、むしろ『女同士の話、ぜひ書いて』という状況に変わってきている」

 映画ではその後、『ゴーストバスターズ』(16年)、『オーシャンズ8』(18年)など過去のヒット作を男女逆転版にするアプローチも相次いだ。『キャプテン・マーベル』(19年)、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』(20年)など、アメコミ系エンタメ作でもストーリーで女性キャラクター同士の共闘を重視。21年7月公開予定の「アベンジャーズ」シリーズの最新作『ブラック・ウィドウ』は、キャラクター同士の姉妹的な絆を物語の中心に大きく打ち出すことをすでに予告している。

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』では、恋人のジョーカーと別れたハーレイが様々な女たちとタッグを組んで敵と対決 (c)2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. BIRDS OF PREY and all related characters and indicia c&TM DC Comics.
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』では、恋人のジョーカーと別れたハーレイが様々な女たちとタッグを組んで敵と対決 (c)2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. BIRDS OF PREY and all related characters and indicia c&TM DC Comics.

 世界的ヒットとなるドラマシリーズも出てきている。刑務所内でのサバイバルを描いたオーストラリアの超人気ドラマ『ウェントワース女子刑務所』(13年~)、チェスの天才と義理の母との依存的連帯が描かれ、ゴールデングローブ賞も受賞したNetflixの『クイーンズ・ギャンビット』(20年)など、女性同士の関係をドラマの中心に据えた作品が、日本でもファンを増やしている。

女性視点のコンテンツ需要の高まり

 世界的にこうした現象が起きている背景として、17年に映画界に激震をもたらしたハーヴェイ・ワインスタインの性暴力告発事件を機に、SNSで性被害・差別に抗する「#MeToo」運動が拡大した影響は大きい。日本でも18年に複数の私大医学部で女性受験者の点数が不正に減点された問題が発覚し、女性視点のコンテンツを求める機運や需要が一気に高まった。

 そうした流れを受けヒットした小説が『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)だ。韓国では130万部の社会現象的ヒットとなり、18年に発売された邦訳も21万部を突破、20年秋に映画版が公開された。30代女性が韓国社会の中で経験した身近でリアルな性差別を描き、 SNSでの共感の連鎖がヒットの一因となった。邦画でも21年春公開の『あのこは貴族』(山内マリコの同名小説の映画化)など、女性同士の関係性の中から社会問題を描く作品も増えてきている。

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『ブラック・ウィドウ』
『ブラック・ウィドウ』
21年7月公開予定。元KGBのスパイで超一流の暗殺者、ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)の過去と秘密を描く。彼女の「妹的存在」として注目の若手女優、フローレンス・ピューがキャスティングされている (c)Marvel Studios 2021

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