小粒なヒットが多い中、文房具部門の2021年上半期ヒット大賞に選ばれたのは、芯を替えづらいという欠点を克服して生まれ変わったゼブラ「シャーボNu」。テレワークで使いやすい横長のノートや、文房具を見せて楽しむ透明ペンケースなども売れた。下半期には、多機能なコクヨのノート「Sooofa」や抗菌文房具が台頭しそうだ。

※日経トレンディ2021年6月号の記事を再構成

ヒット大賞を受賞した「シャーボNu」(左)と、下半期ブレイクしそうな「タブラ マグネットバインダー」(右)
ヒット大賞を受賞した「シャーボNu」(左)と、下半期ブレイクしそうな「タブラ マグネットバインダー」(右)

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 ペーパーレスや少子化にコロナ禍が追い打ちをかけ、マイナス成長を続ける国内文房具市場。小粒なヒットが多い中、幅広い年代層に響いたのがゼブラの多機能ペン「シャーボNu」だ。

 1977年の発売時から大きくは変わっていなかった多機能ペンの古豪「シャーボ」の基本設計を大幅に刷新した。内部ユニット(シャープメカ)を中央に配置する「トップインシャープ機構」を採用。分解しなければ芯を補充できないという従来の多機能ペンが持つ潜在的なストレスを解消し、上からシャープ芯を簡単に補充できるようにしたところ人気が急拡大した。

【特集】2021年 上半期ヒット大賞&下半期ブレイク予測

 中高級の多機能ペンという位置付けながらも、価格を税込み1980円とエントリークラスに抑えたことで、若年層の取り込みにも成功。実際に「購入者の多くはシャーボ人気を知らない若い世代だった」(ロフト)という。様々な場所で仕事をするテレワークで「ペンを何本も持ち歩きたくない」というニーズにも合致し、シャーボブランドの売り上げ本数が前年比150%に伸長した。

【上半期ヒット大賞】弱点を解消し使いやすくなった多機能ペン
シャーボNu(ゼブラ)

【上半期ヒット】ブレないままシャープも搭載
ブレン2+S(ゼブラ)

 ノック式ボールペンの宿命であるペン先のブレを制御する機構を内蔵し、発売2年でシリーズ累計の販売本数が1000万本を突破したボールペン「ブレン」の多機能ペンタイプ。ブレを防ぐためペン先に金属パーツを取り付ける独自の「低重心設計」やノイズフリー設計も踏襲している。従来のブレンの愛好家だけでなく、他の多機能ペンからの乗り換えもあり、販売数を伸ばした。

 テレワークの本格化により、自宅やカフェで本腰を入れて仕事をするための文房具のヒットも目立った。ダイゴーが20年9月に発売した「isshoni.ノート デスク」はパソコンやキーボードの前に置ける横型ノート。狭い場所でも効率良くメモを書けることが受け、好調に販売を伸ばしている。人気を受けて厚口タイプや横罫などバリエーションが拡充された。他社の参入も見込まれており、こうした“隙間ノート”は文房具の1ジャンルとして確立しそうな勢いだ。

【上半期ヒット】コロナ禍で横長ノートに注目
isshoni.ノート デスク(ダイゴー)

 在宅勤務が浸透し始めた大人と異なり、学校などのリアルなコミュニケーションの場がある中高生の女子を中心に売れているのが「機能性」と「映え」を両立した商品だ。コクヨの「ツールペンケース〈ピープ〉」は、インナーケースが内蔵された透明のペンケースで、価格は1650円(税込み)。文房具を分類して収納できるだけでなく、「お気に入りのかわいいアイテムは見せて、実用的だが無骨な文房具は隠したい」という女子中高生の心理を捉え、ヒットに。年間売り上げ目標を1カ月で達成し、20年7月の発売から半年で累計出荷数量10万個を突破した。

【上半期ヒット】出荷数10万を突破 見せて楽しむ透明ペンケース
ツールペンケース〈ピープ〉(コクヨ)

 カラフルなメッシュケース「ペン&ツールポーチ」(ミドリ)もインスタグラムなどのSNSで話題になった。多ポケットで文房具を分類できることも人気の理由。

【これもヒット】色で仕分けもしやすいポーチ
ペン&ツールポーチ(ミドリ)

 同様に、機能性と見た目の両方で優れていたのが、コクヨの「Bobbin(ボビン)」。ミシンなどで使用される糸巻きのボビンをイメージしたマスキングテープ関連グッズのシリーズ。オリジナルの「コマキキ」のハンドルを回してマスキングテープを小さな「ボビン芯」に巻き替えられる。ボビン芯を連結したりしてコレクションしたり、プレゼントしたりできることが受けた。

 30~40代を中心とした女性が飛びつき、一時は品薄状態にまでなった。その人気は「落ち着いていたマスキングテープの売り上げがボビンの登場で一気に前年超えに盛り返したほど」(ロフト)。巻き替えに使うアイテム「コマキキ」(税込み660円)は初月目標の180%を達成した。

【上半期ヒット】“巻き替え”が人気を呼んだマステグッズ
Bobbin(ボビン)(コクヨ)

【上半期ヒット】高解像度な“スマホテプラ”の在庫が完売に
ラベルプリンター「テプラ」PRO ”MARK” SR-MK1(キングジム)

 テプラPRO初のスマホ専用モデル(実勢価格1万6500円。税込み)。19年にヒットしたスマホ専用の「テプラ Lite LR30」よりデザイン性の高いラベルを作成できる。予約受注の段階でメーカー在庫が完売するほどの人気に。

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