
2021年上半期を代表するゲームアプリといえば、21年2月24日にリリースされた「ウマ娘 プリティーダービー」だ。約1カ月半で累計ダウンロード数が500万を突破した裏には、2つの層のファンをつかむコンテンツ作りの妙があった。制作したCygamesの開発者に話を聞いた。
※日経トレンディ2021年6月号の記事を再構成
現在、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進するクロスメディアコンテンツが、「ウマ娘 プリティーダービー(以下、ウマ娘)」だ。一見すると、単なる“ウマ耳”と尻尾を持つ美少女コンテンツのように思えるが、実在した競走馬の名前と魂を受け継いだ「ウマ娘」たちが、「日本ダービー」「安田記念」など実名のレースに出走し、勝利を目指すという、競馬の要素を色濃く取り入れた作品だ。
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コンテンツには漫画、アニメ、ゲームなどがあるが、中でも大ヒットを記録中なのがゲームだ。リリース後、約1カ月半で累計ダウンロード数は500万を突破。アプリの市場データと分析プラットフォームを提供するApp Annieによると、21年3月の国内アプリストアゲームジャンルの売り上げランキング、ダウンロード数ランキングにおいて、App Store・Google Play・合算のそれぞれで首位を獲得したという。
なぜここまでの垂直立ち上げとなったのか。ブームの拡大を分析すると、競馬を知らない一般のファンと、競馬をよく知るファンの両方から支持を受けたことが見えてきた。
そもそも「ウマ娘」の始まりは、16年にCygamesがプロジェクトを発表し、同年に漫画連載を開始したことにさかのぼる。ただ、最初に認知度を高めたのは、18年4月に放送されたテレビアニメ第1期の影響が大きい。“ウマ耳”で尻尾の生えた美少女が全力でレースをしているという絵面の強さや迫力あるレースシーンが、多くのアニメファンの注目を集めた。
競馬ファンでなくてものめり込める演出・シナリオも高い評判を獲得。レースで勝利した際にはキャラクターがウイニングライブを開催する「アイドルコンテンツ」のような側面も魅力で、18年冬にリリース予定だったゲームを待ち望むアニメファンは多かった。
ゲーム
配信延期を経て、21年2月24日にゲームがついにリリース。当初は一部の盛り上がりだったが、2日後の同26日、実際の競走馬ゴールドシップ(通称:ゴルシ)の担当厩務員だった今浪隆利氏が「ウマ娘」プレー中の様子をTwitterに上げ、「本物のゴルシよりむずかしい」とつぶやいたことに競馬ファンも反応。さらにモデルとなった競走馬のレース映像やエピソードがTwitterを中心に拡散され、3月頭にはコンテンツの盛り上がり自体が一般にも知られることとなり、認知が拡大した。一過性の話題で終わること無く、つかんだファンを離さなかった。
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