
2021年上半期のヒット商品と、下半期にブレイク期待の商品を一挙に紹介する、日経トレンディ恒例企画の第1回。新型コロナの感染拡大から約1年が経過し、巣ごもり生活にマッチしていれば売れる時代は終わった。次は、革新的な工夫で「新しい生活様式」に溶け込んだ商品がヒットをつかんでいる。ヒットとブレイク予測、それぞれの3つのキーワードと、14部門でヒット大賞を獲得した商品・サービスを紹介する。
※日経トレンディ2021年6月号の記事を再構成
新型コロナの感染拡大から1年が過ぎた。コロナ禍を前提とした生活への順応が進み、人々の消費態度は以前より前向きといえる。外出自粛による「巣ごもり需要」は新しい段階に入った。
【第2回】 YOASOBIや北村匠海を輩出 「THE FIRST TAKE」大ヒットの理由
2020年春ごろは、パスタや冷凍食品など保存食なら何でも売れた。飲食店の営業自粛やテレワークの普及などで自宅で料理をする機会が増えたからで、当初は何とか食事ができればそれでよかった。しかし時間がたつにつれて、インスタント食品や冷凍食品のトレンドは、「より簡単に」「よりおいしく」という方向に進んでいる。冷凍食品でありながら、から揚げ専門店の一品のような大きさがあり、満足度の高い「ザ★から揚げ」(味の素冷凍食品)のヒットは、その好例だ。高級トースターも、高くても手軽さと味を両立できているものが受けた。
上半期ヒットキーワード(1)「ちゃっかリッチ」
手軽な健康法と言える入浴剤も、一般的なタイプより勢い良く発泡して素早く溶ける「きき湯ファインヒート」(バスクリン)のような、高付加価値製品に勢いがある。増えた“おうち時間”を充実させたいが、手間はかけたくない。やや矛盾する2つの欲求を同時に満たす商品が注目された。部屋着と同等の着心地ながら、オンライン会議では仕事用スーツに見える見栄えがある「テレワークスーツ」(AOKIやコナカなどスーツ量販店各社が発売)も、この「ちゃっかリッチ」の範囲に入るだろう。
高級化ではなく、選択肢を増やすことで「飽きにくさ」と「選ぶ楽しみ」を両立した製品もある。例えば、プレミアムビールの「エビス」シリーズ(サッポロビール)は、「季節商品も含めて4本から選べる」と打ち出す工夫でリニューアル。伸び悩んでいたシェアを上向かせた。
上半期ヒットキーワード(2)「選べる醍醐味」
機能的には既存商品とそれほど変わらないのに、選択肢を増やしたことでシリーズ全体で販売を伸ばした商品もあった。高級おにぎりやプレミアムビールなどの「ちょい高」製品にその事例が多かったのが興味深い。多色展開で売れた不織布マスクもある。
その一方で、コモディティー化が進んだ生活必需品では、これまで以上に低価格が求められるようになった。「月20GBで2970円(税込み)」という斬新な料金設定で携帯電話業界を一気に変えた「ahamo」(NTTドコモ)や、Windowsパソコンよりも高いコスパでシェアを伸ばしつつあるChromebookはその象徴と言える。
上半期ヒットキーワード(3)「異次元コスパ」
携帯電話の新料金プランの他、トヨタ自動車の小型SUV「ヤリス クロス」など、シェアトップのメーカーが出した高コスパ商品が相次いでヒット。裏を返せば、これまでの「必需品」には、消費者から価格性能比に厳しい目が向けられているとも言える。
下半期のブレイク予測、3つのキーワード
それでは、これから商品をヒットさせるにはどのような工夫が必要だろうか。下半期に向けて企業が勝負を懸けてきた商品群を見て一つ言えるのは、「見た目の分かりやすさ」がこれまで以上に重視されるのではないかということだ。高品質な巣ごもり商品が出そろった中では、品質を訴えるだけでなく「泡が出続ける缶入り生ビール」「券面に番号表記がないクレジットカード」といった、分かりやすい特徴を備える必要があるだろう。
下半期ブレイク予測キーワード(1)「見た目9割特化」
中身や機能はそれほど変わらなくても、見た目で新規性を伝えられればヒットする。泡が自然発生する缶の開発に注力した「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」(アサヒビール)はその象徴だ。クレジットカードやレジャー施設も、外観のインパクトが人気の前提条件になりそうだ。また、裸眼3Dモニターのような消費者をびっくりさせる技術も期待大。
仕事に行くのは数日おきで、マスクと手指消毒はもちろん必須──。そんな新しい生活様式では、「清潔」の常識も変わる。人々の生活様式の変化を緻密に分析して、そこにマッチした商品を企画するのも堅実と言える。
下半期ブレイク予測キーワード(2)「真・清潔主義」
例えばパナソニックの新型シェーバー「ラムダッシュ 6枚刃」シリーズは、「毎日ではなく、数日おきにしかひげをそらない人が増えている」という変化を捉えて、長い癖ひげにフォーカスした改良を施しており、ヒットが期待できる。清潔に対する意識が高まり、これまで以上に衣服についた体臭が気になるといった、小さな不満をうまく解消すればヒットにつながるだろう。
毎年少しずつ深まる「健康志向」では、単にたんぱく質の配合量や糖質の削減率などを訴求する時代がそろそろ一段落しそう。たんぱく質を15グラム配合した「カップヌードルPRO 高たんぱく&低糖質」のように、健康的でありながら既存商品と同等以上の味を目指した商品が流行しそうだ。
下半期ブレイク予測キーワード(3)「おいしい健康」
「健康っぽいものはおいしくない」と思われていたビールやカップ麺にも、味に配慮した製品が現れた。共通するのは、高たんぱく、低糖質などの特徴がありながら、味も見劣りしないこと。健康に良いのは当たり前で、おいしさをどう訴えるかがカギになる。
上半期ヒット大賞を獲得した全14商品を一挙紹介!
以下は、日経トレンディが選んだジャンル別の「2021年上半期ヒット大賞」(全14部門)を獲得した商品・サービスだ。それぞれにどんなヒットの理由があるのか、次回以降、ジャンルごとに詳しく紹介する。