激変! ノンアル市場 最前線

「スロードリンク」「ドリンク・スマート」「スマートドリンキング(スマドリ)」といった言葉を聞いたことがあるだろうか? これらは大手ビールメーカー各社が近年、適正飲酒を啓発、推進するために掲げているキャッチフレーズ。スロードリンクはキリン、ドリンク・スマートはサントリー、スマドリはアサヒビールだ。

キリンが2021年に注力するノンアルビールテイスト飲料「グリーンズフリー」
キリンが2021年に注力するノンアルビールテイスト飲料「グリーンズフリー」

前回(第1回)はこちら

キリンが推進する「スロードリンク」のロゴ
キリンが推進する「スロードリンク」のロゴ

 キリンのスロードリンクは「ゆっくりお酒を楽しむ(人)」の意味で、イッキ飲みなどをして短時間で大量に飲酒する「スピード飲酒」とは対極の、新しい飲み方の提案である。同社の提唱サイトには、「正しいお酒との付き合い方を知ることで、飲む人も飲まない人も、誰もが豊かなひとときを過ごしましょう」という文言がある。なぜ各社、このようなスローガンを掲げて活動しているのか? 国内大手各社はグローバルで以下のような社会的要請を受けて企業活動を迫られている。

1. 世界保健機関(WHO)が非感染性疾患(生活習慣病)による30歳から70歳までの死亡率を2025年までに25%削減する目標を設定し、リスク因子の1つとしてアルコールをやり玉に挙げている。WHOの欧州支部は、コロナ禍において、精神的ストレスが飲酒機会を増やし、飲酒を通じた人との接触が感染拡大要因になるとして酒類の規制強化を提唱した。

2. 2015年に策定された国連のSDGs(持続可能な開発目標)の健康分野でも、「薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する」と規定されている。

3. 世界の主要酒類メーカーが加盟する国際NPO組織、IARD(責任ある飲酒国際同盟)で、酒類業界が一丸となって有害飲酒削減に取り組む旨、確認している。

 企業として利潤追求のみに走れば、タバコ業界のように販売規制をかけられるという危機感から、例えばオランダの大手ビールブランド、ハイネケンは、メディア用予算の10%を「責任ある飲酒」に関するプログラムへの投資に充てている。米国では、開店間もない時間帯にアルコールを値引き販売する「Happy Hour」を一部の州で禁止した他、ノルウェーでは大手年金基金運用会社がアルコール関連企業銘柄をESG投資の対象から外すといった動きもある。

 “圧力”は海外からだけではない。国内からも、アルコール度数が高いカクテル・チューハイ類の“ストロング系”飲料に対して、依存症の専門医から危険視する声が上がっている。