サブスクビジネス、失敗からの脱却

家具のサブスクサービス「subsclife(サブスクライフ)」が、コロナ禍を契機に売り上げを伸ばしている。月額で数百円から利用可能で、使い始めのコストを下げながら利用できるのが特徴。リリース当初1件も申し込みがなかったという苦境から、どのようにサービスを成長させたのか。

川上昌直氏
subsclifeでは10万種類以上の家具を用意。利用の際には3~24カ月の期間を指定する。期間が長いほど、毎月の支払額は少なくなる。期間の終了後は、買い取りも可能。途中で解約するには、手数料として残りの額を支払う必要がある

 subsclifeは月額数百円から利用できる家具のサブスクリプションサービス。利用期間は3カ月から24カ月の間で自由に設定でき、期間終了時には返却、買い取り、契約延長のいずれかを選択できる。家具はすべて新品で、長く利用しても支払総額が定価を超えることのない料金設計になっている。

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 もともとは個人向けサービスとしてスタートしたが、コロナ禍で働き方やオフィスのあり方が変化したことで法人の割合が増加した。企業がリモートワークの対応を迫られ、個人の巣ごもり需要も高まり、21年3月の売り上げは2年前の同月と比べて約16倍、前年同月と比べて約3倍にも成長した。

 「知り合い以外には1件も契約がなかった」。18年3月、ベータ版をリリース。ところが、2週間たっても新規の申し込みはなかった。「長い2週間だった」と振り返るのは、subsclife(東京・渋谷)CEO(最高経営責任者)の町野健氏だ。

 町野氏が家具のサブスクに踏み切ったきっかけは、17年に米国で開催されたテックカンファレンス「LAUNCH Festival」だった。スタートアップが新サービスをプレゼンするピッチイベントで、多くの登壇者が課金方法にサブスクを挙げていたという。

 subsclifeの前身となる会社でオリジナル家具を手掛けていた町田氏は「家具も(数年以内に)サブスクになる」と直感した。半年かけて、その後のsubsclifeにつながるサービスを立ち上げる。町野氏の見立てでは「米国のおよそ2年半後にブームが来るだろう」。ブームに先駆けてサブスクの市場へと飛び込んだ。

subsclifeの町野健CEO(最高経営責任者)。日本ヒューレット・パッカードのコンサルタント、マクロミルにて経営企画や海外事業立ち上げを経て、2016年にカマルクジャパン(現subsclife)を設立。18年3月、家具のサブスクサービスをローンチした
subsclifeの町野健CEO(最高経営責任者)。日本ヒューレット・パッカードのコンサルタント、マクロミルにて経営企画や海外事業立ち上げを経て、2016年にカマルクジャパン(現subsclife)を設立。18年3月、家具のサブスクサービスをローンチした

 当時のビジネスモデルは、デザイン性の高いサブスク専用の家具を自社開発し、利用者に提供するというもの。扱っていたオリジナル家具は、スツールなどの家具が全5種類。カラーバリエーションも用意した。

 だが、なかなか契約に結び付かない。見込み客にヒアリングをしたが、返ってくる言葉はさまざまだった。「知らない会社のサービスだから利用しづらいとか、新しい課金方法だから不安だという声もあった」(町野氏)。それらの声を正面から受け止めるのであれば、広告などのプロモーション施策を打つ、課金方法を変えるといった選択肢もあったはずだ。

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