サブスクビジネス、失敗からの脱却

消費者にとってお得なサブスクを始めたものの、採算が合わない、あるいは既存の製品やサービスと競合してしまう失敗事例が続出した。JR東日本クロスステーションはあえてPR目的として採算を追わないサブスクを展開する。「もうけないサブスク」は新たなマーケ手法として定着する可能性がある。

JR東日本エリアの駅に設置した「イノベーション自販機」と呼ばれる最新型の自動販売機で1日1本ドリンクを受け取れるサブスクサービス「every pass(エブリーパス)」を提供している(写真提供/JR東⽇本クロスステーション)
JR東日本エリアの駅に設置した「イノベーション自販機」と呼ばれる最新型の自動販売機で1日1本ドリンクを受け取れるサブスクサービス「every pass(エブリーパス)」を提供している(写真提供/JR東⽇本クロスステーション)

 JR東日本クロスステーション(東京・新宿、当時はJR東日本ウォータービジネス)は2019年10月に自動販売機のサブスクリプションサービス「every pass(エブリーパス)」を開始した。スマホアプリに届くQRコードを、駅の対応自販機にかざすことで、1日1本飲み物を受け取れる。

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 同社のプライベートブランド(PB)商品のみの「アキュアメイドプラン」が月額980円(税込み、以下同)、他飲料メーカーを含む「プレミアムプラン」が月額2480円(7カ月目以降は2980円)。仮に30日間150円の商品を毎日買えば合計4500円となる。毎日利用する人にとっては、お得感のあるサービスといえる。サービス開始時には限定500人で募集をしたところ、約9000人と定員の18倍となる応募があった。その後、20年9月に募集人数を2000人に拡大した2度目の募集でも4000人が集まった。20年12月の第3弾では3000人を募集している。

JR東日本クロスステーションのアプリ「アキュアパス」。飲料の購入に利用できるほか、サブスクサービスを利用する際に使う
JR東日本クロスステーションのアプリ「アキュアパス」。飲料の購入に利用できるほか、サブスクサービスを利用する際に使う

 「サブスクでもうけようとしていない」。JR東日本クロスステーションのウォータービジネスカンパニー営業部自販機戦略ユニット兼企画部デジタル戦略ユニット副課長、東野裕太氏は、そう言い切る。利用者にとって価格面でのメリットが大きいサービスを設計すれば、事業者にとっては割の良くないビジネスとなる。であれば、抽選で利用者数を絞りつつ、SNSなどで話題を集めるためのプロモーションとして割り切る、という考え方を取った。

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安さ勝負ではスーパーに勝てない

 JR東日本クロスステーションは「acure made(アキュアメイド)」という名称のPB商品を扱っている。果汁100%の「つがる」「ふじ」「トキ」といったリンゴジュース(170円)や「福島あかつき もも」(180円)、ペットボトルで飲むラムネ味の「From AQUA 天然水ゼリー」(130円)など独自性のある商品を投入してきた。「ミネラルウオーターやコーヒーは他社も力を入れて多数の商品を出しているので、果汁にこだわる、ゼリーに挑戦するなど、メディアに取り上げられるような話題性を高めることを目指してきた」(東野氏)

 サブスクのきっかけは19年10月、消費税が10%に上がるタイミングのてこ入れ策だった。軽減税率の対象であったため飲料の値段は変わらなかったが、「14年の消費増税では自販機での飲料の値段が10円上がり、買い控えが顕著に見られた」(東野氏)。

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