サブスクビジネス、失敗からの脱却

飲食店経営のfavy(東京・新宿)は2016年から、月額制でコーヒー飲み放題のサブスクリプションサービス「coffee mafia」を展開している。月額3000円で1杯480円のコーヒーが1来店ごとに1杯無料で飲めるサービスだ。同サービスは開始当初から失敗の連続だった。損失を垂れ流し続けた時期もある。favyはどのようにして、もうかるサブスクに改善したのか。その秘訣(ひけつ)である同社の「サブスク価格試算シート」を初公開する。

飲食店経営のfavy(東京・新宿)はコーヒー飲み放題のサブスクリプション「coffee mafia」を展開する。複数の失敗を乗り越え、利益を生むサービスへと改善した
飲食店経営のfavy(東京・新宿)はコーヒー飲み放題のサブスクリプション「coffee mafia」を展開する。複数の失敗を乗り越え、利益を生むサービスへと改善した

 「coffee mafiaの失敗談を挙げれば切りがない。中でもインパクトが大きかったのはサービス開始当初に原価設定を誤り、顧客が増えるほど赤字幅が広がるサービス設計になってしまったことだ」

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 favyの高梨巧社長はこう振り返る。サービス開始当初のcoffee mafiaの価格は月額2000円。前例のないサービスゆえに、飲食店や小売店のPOS(販売時点情報管理)システムのデータなどから、来店数を予測して手探りで価格を設計した。想定ではサブスク会員の月間の平均来店回数は10回前後。これなら2000円でも十分採算が合う計算だった。ところが、蓋を開けてみれば初月の平均来店回数は16回。翌月には19回に増え、最終的には22回になったという。想定の2倍の来店数ではむしろ損失が生まれてしまう。

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 「一般的な飲食店は、同じ店に何度も通う人は少ない。コンビニエンスストアのような使われ方をするのは想定外だった」と高梨氏は苦笑する。そのままサービスを続けていては、損失を垂れ流し続けることになる。この失敗を打開するきっかけになったのがデータだ。

 coffee mafiaの会員は、来店時にスマートフォンに表示した会員証を提示する。会員証に表示されたバーコードを読み取ることで認証が完了し、コーヒーが提供される。現在の仕組みでは提示すら必要ない。店内でマイページを開き、画面上で来店ボタンをタップすると、POSレジと連動して来店としてカウントされる。これにより、飲食店では得にくい「個人ごとの来店データ」が蓄積されていった。

 「サービス開始初月の時点で事業として成立しないことは明白だった。2カ月目に取れている来店データの有用性に気付き手を打った」と高梨氏は言う。サブスクの会員データを基に、平均来店頻度とコーヒーの注文数を割り出した。ここから逆算して、まずは2つの施策で応急手当てをした。

原価の低下とクロスセルで損失を相殺

 1つ目は原価の抑制だ。「設定原価率が高過ぎたので、まずはその引き下げを目指した」(高梨氏)。会員1人当たりのコーヒーの平均注文数が分かれば、その回数から逆算して原価率を設定すれば、利益が出せるという発想だ。コーヒーの抽出法を変え、利用するコーヒー豆の量を抑制した。また、コーヒー豆の買い付け方法を変え、一回の調達量を増やすことで、ボリュームディスカウントを利かせた。これにより、原価率を30~40%削減した。

 2つ目の施策は、一般的な飲食店と比較して異例ともいえる「来店頻度」を生かしたクロスセルだ。来店頻度が高いということは、それだけ店頭での接客のチャンスが多いともいえる。そこで、トーストやドーナツなどの食品を店頭に充実させることで、ついで買いを誘った。これにより顧客単価が高まれば、コーヒーの損失を補填できる。実際、サブスクの会員は、非会員よりも300円ほど平均客単価が高いことが分かった。「この2つの施策で、何とか耐えられるようになった。だが、それでも利益はほとんど出なかった」(高梨氏)

 そこで、次なる施策として値上げに踏み切った。月額会員の最低料金を3000円に引き上げたのだ。なぜ3000円だったのか。その根拠はfavyが独自開発した「サブスク価格試算シート」にある。このシートは4つの情報を入力するだけで、サブスクで利益を出すためのプランの適正価格を自動的に算出できる計算式が組み込まれている。

4つの情報の入力で適正価格を瞬時に把握

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