
ヤフーは、経済産業省と特許庁が表彰する令和3年度「知財功労賞」の「特許庁長官表彰」において、「デザイン経営企業」を初受賞した。受賞理由は、経営層がデザイン思考の重要性を理解しており、UI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)を重視し、サービスの新規提供と改善を連続して実施しているというものだ。IT企業が「デザイン経営企業」を受賞するのは今回が初めてのことになる。
ヤフーが提供している電子メールサービス「Yahoo!メール」のリニューアルが現在進行中だ。2021年6月ごろから順次新しいYahoo!メールの提供を開始し、9月ごろに全ユーザーに新しいYahoo!メールを提供、22年1月ごろに現在のデザインの提供を終了する予定になっている。
新しいYahoo!メールは、画面をシンプルではっきり見やすくするために、Web技術の標準化団体であるW3Cが提唱しているアクセシビリティー基準に準拠し、文字やボタンを見やすくしたり、動作や画面の切り替えがよりスムーズに、操作の手間を減らせるよう改善したりして、操作感をより快適にした。
別部門の担当者がデザインをチェック
「例えば色のコントラスト比は、色覚多様性をもつ人でもしっかり見えるようにするなど、さまざまなガイドラインを設定し、そのスタイルを全面的に適用したのが最も大きな変更ポイントだ」
ヤフーサービス統括本部PIM本部デザイン部長の渡部健氏はこう説明する。こうしたガイドラインを設定するに当たっては、例えばコントラスト比については実際に色覚多様性をもつ人に見てもらうなど検証を重ねている。また、従来のUIでは設定画面がさまざまな場所や階層に分散して見つけにくかった点を改め、1カ所に集約するように改善した。
一方で、基本的なボタンの配置やレイアウトはほとんど変えていない。「現在のユーザーの使用感を大きく変えると、ユーザーに学習コストをかけてしまう」(渡部氏)からだ。さらに年内いっぱいは新旧のデザインを切り替えて使えるようにしており、徐々に新デザインになじめる環境を整えている。「既存ユーザーの使用感を損なわずに現代的な使用感を実現するという、相反する2つの要素を両立させることが目標だった」と渡部氏は言う。そのために、幅広い立場の人々に意見を求めた。
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