
近い将来、リアルもネットも境目なく、あらゆる行動がデータ化されるようになったら──。そんな時代に持つべき視点や求められるUX(ユーザーエクスペリエンス)について、ビービット(東京・千代田)のCCO(チーフ・コミュニケーション・オフィサー)、藤井保文氏が語った。
ビービット 執行役員CCO、東アジア営業責任者
──「アフターデジタル」とは?
藤井保文氏(以下、藤井) これまでは、リアルに時々ネットが接続する「ビフォアデジタル」な世界でしたが、これからは、リアルもネットと同様に常にデータ化された「アフターデジタル」な世界。PCでネットを使っていた時代など、ビフォアデジタルな世界では、PC画面という限られたシーンの中でユーザーのジャーニーを考えることがUX(ユーザーエクスペリエンス)とされていました。しかし、アフターデジタルの世界ではネットがリアルに侵食してにじみ出てくる。すると、もっと大枠でのUXが問われるようになります。
アフターデジタルという世界観は、テクノロジードリブンで冷たい世界として認識されることもありますが、伝えたいのは、ネットとリアルの区別がなくなることでUXの重要性が跳ね上がること。そんな時代の到来を前に、より良い社会をつくるためにUXを起点としてサービスやビジネスを考えようということです。
データでユーザー体験が向上
──常にデータを取ることでもたらされるメリットは?
藤井 アフターデジタルな世界でどのような価値が生まれるかは、中国の先行事例を見るとよく分かりますね。例えば、中国で人気のタクシーアプリに「DiDi」があります。DiDiの登場以前、中国のタクシー運転手の質はひどいものでしたが、今では、ぼったくられることも、無駄な遠回りも、乗車拒否も大幅に減りました。スマートフォンやセンサーといった技術によってドライバーの運転を常時、正確に捉えられるようになったからです。ドライバーとしても、評価されて賃金が上がれば、もっと賃金を上げたいという気持ちが働きます。すると、ドライバーが品行方正になって、結果的に安心安全な乗り物に変わってきたというわけです。DiDiは、ドライバーの根本にある「利益を上げたい」という欲求を起点に、ユーザー体験を向上させています。
──ユーザーのメリットはほかにもある?
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