
コロナ禍で休館や営業時間短縮を続ける美術館や博物館。その中でオンライン展覧会に活路を見いだそうとする動きがある。太田記念美術館(東京・渋谷)が始めたのは、「note」を使った一風変わったオンライン展覧会。他の美術館も手掛けるツアー形式の動画によるオンライン展覧会と違い、鑑賞者が自分のペースで、好きなときに楽しめるのが最大の特徴だ。そしてオンライン展覧会は「専門知のストック化」でもある。
2021年1月、浮世絵を専門に展示する太田記念美術館は、オンライン展覧会を始めた。他の美術館が多く手掛けるツアー形式の動画ではなく、絵画のデータと解説文をメディアプラットフォーム「note」に投稿し、有料記事を「展覧会」として販売している。動画による展覧会を「動」とするなら、これは「静」の展覧会だ。
これまで10本のオンライン展覧会を実施し、現在も8本を販売中だ。太田記念美術館の主席学芸員である日野原健司氏は、noteを選んだ理由をこう語る。
「生配信などの方法が広がっている音楽業界や演劇業界に比べ、オンライン化が遅れているのが美術業界ではないか。学芸員がギャラリーツアー形式で動画配信をすると、機材の準備や配信の環境整備などハードルも多い。バーチャルな美術館の中を見られる形式もあるが、操作性もまだ十分ではない。その点、noteは画像と文章を合わせて書くうえで操作性が良かった」
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Twitterからnote、そしてオンライン展覧会へ誘導
直近の10年はインバウンドにも支えられ、同館の入館者数は順調に推移した。18年3月期は9万2354人、19年3月期には11万4678人と増えたが、20年3月期はコロナ禍もあって8万9882人となり、さらに21年3月期には2万8856人まで激減した。美術業界では大型美術館などを中心に経営が好調であったことが、かえって危機感や今後のビジョンを育まなかったのではないか、と日野原氏は分析する。
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