動画コンテンツなどを話題にしてきたCHOCOLATE Inc.(チョコレイト、東京・渋谷)のCCO(チーフコンテンツオフィサー)・栗林和明氏が、おもしろいものの「つくり方のつくり方」を指南する連載の第2回。クリエイティブはセンスだと見られがちだが、栗林氏自身はセンスがあるとは全く思っていないという。それに勝る“たのしみ”について語る。
こんにちは。栗林和明です。
前回も少しお話ししましたが、もう少し詳細な僕の自己紹介と、CHOCOLATE Inc.(以下、チョコレイト)の紹介――2021年9月8日にリニューアルをしたので、その辺りの話もしていこうと思います。
0からつくる力だけを培っていた
僕が最初に広告に興味を持ったのは、中学生の頃でした。当時、「カンヌライオンズ」という広告祭において日本人がグランプリを取ったというニュースをたまたま見たときに、広告について何も知らず、そして、もちろん広告業界へ就職するなんてことも考えていなかったのにもかかわらず、なぜかこのステージの上に自分が立つんだろうな、というイメージが湧いたんです。
しかし、実際の進路を決めるときに重要であろう大学時代は、ありきたりな大学生生活を送っていました。テニスサークルに入り、毎日飲み会をし、授業をできるだけサボり、カラオケに行くという……ある意味絵に描いたような分かりやすい大学生でした。
でも、ある日このままじゃダメだな、と思い立ち一度休学、その間に自分で広告研究会を立ち上げ、他大学の学生たちを巻き込みフリーマガジンをつくり、ゼロから飛び込み営業をしてズタボロになりながらも最低限のプロデューススキルを身につけたところで復学。その年の就職活動では、一番行きたかった博報堂という会社から内定をいただくことになります。
博報堂は、もともとすごくおもしろい仕事をたくさん手がけていることも知っていましたし、周りの人からも自由な環境だということを聞いて、自分に合いそうだな、と思って受けたら、その年の最初の内定者だったみたいで……空気感、みたいなものが合っていたんでしょうね。あとは、「広告研究会をつくったり、フリーペーパーで400万円を売り上げたり、0からつくる力は他の誰にも負けないし、絶対これからの博報堂には必要な力ですよ」と言っていたのが評価されたんだと思います。
入社後は、ソーシャルメディアプランニング部という部署に配属。SNSを使っている企業がまだまだ少なかった時代に、SNSの可能性を拡張していくための部署で、そこで僕はひたすらFacebookの研究をしていました。
そのときに初めて、マーケットを整理するために「図解」というものを覚えて、図解スキルが目覚めました。それが前回話した「バズのツボ」なんかに生きてくるんだと思います。
でも、実はこの時代が相当つらくて。研究ばかりやっていたので、クリエイティブなことは全然何もできなかったんです。Webに関することには詳しい自信があるし、実際にいろんな案件に呼んでいただくこともあるから、すごく幅広くやってはいたものの、CMもつくれない、キャッチコピーも書けない。結局何ができる人間なのか自分でも分からない状態というのが3年間くらい続いてしまって。
ただ、そのもがきは徐々に認められて、褒めてくれる人も出てきたおかげで、4年目になるとようやく僕の新しいものをつくりたいという欲求がかなうようになりました。そこで、初めてしっかりと実績を出せたのが「忍者女子高生」。あれは、めちゃくちゃ研究した結果、緻密に設計すればしっかり当たるものがつくれるという実感が生まれたプロジェクトでした。
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