連載7回目は、「鬼滅の刃」のヒット事例を参考に、オルタナティブデータとしてのテレビデータと株価の関係を読み解く。テレビメタデータ(テレビ放送記録)を提供するエム・データ(東京・千代田)のライフログ総合研究所所長を務める梅田仁氏が露出トレンドを追った。

テレビメタデータを分析すれば、株価を読み解くこともできる(画像/Shutterstock)
テレビメタデータを分析すれば、株価を読み解くこともできる(画像/Shutterstock)

 マーケティングのKPI(重要業績評価指標)は、施策を実施した結果として得られる直接的な数値で設定されることが多い。

 例えばキャンペーンサイトのトラフィック数、獲得したリード数、SNSでのメンション数、貢献した売り上げ、利益。だがCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)の立場になると、そもそもマーケティング部門に対する投資(経費や人件費)が業績にどのように貢献したのか、という説明を継続して求められるようになる。それを求めるのは株主であり、効果の見えない費用や部門は削減の対象となりやすい。

 ビジネス貢献度の議論において、経営の観点で外せないKPIは「株価」だ。Apple、IBMといった米国企業でマーケティングを担当してきた筆者にとって、この株価貢献度でパフォーマンスを語る、という手法はなじみ深い。

 これらの企業内で使われてきた、マーケティングメトリクスを株価で評価する手法は、そのまま金融の世界でも使えるのではないだろうか。株価は企業活動の総体の結果として形成される。活動の総体を計測できれば、それは株価の評価にも使えるはずだ。もし、株価の形成に貢献度が高い株価以外のデータ、いわゆるオルタナティブデータをマーケティングの世界から提供できたら、そしてその指標はCMOが経営会議で求められるKPIそのものでもあるとしたらどうか。

 今回は、マーケティングデータで株価を読む話だ。

■ 図1 ソニーグループのテレビ露出と株価の関係
■ 図1 ソニーグループのテレビ露出と株価の関係
出典:テレビメタデータとソニーグループの株価から筆者作成

テレビ露出倍増で株価26.6%上昇したソニーグループ

 図1は2019年8月18日から21年2月14日までのソニーグループのテレビ露出と株価の関係を表したグラフだ。アニメ映画「鬼滅の刃」を制作したアニプレックス(東京・千代田)はソニー・ミュージックエンタテインメントの子会社。データはテレビ民放各局が出資するエム・データのテレビメタデータを使用している。テレビの放送内容がテキストで記録されているので、ブランド名や製品名で抽出をかければそのトピックが、いつ、どの局の、どの番組で、あるいはどのCMで、どのような内容で、何秒間放送されたのかが分かる。

 証券コードでの抽出にも対応予定なので、今回のような金融ニーズでの利用にも柔軟に応えられるはずだ。

 図1の一番上のグラフはソニーグループの企業、ブランド、全製品に関連した週あたりのテレビ番組露出秒数、2番目はテレビCM露出秒数、3番目は番組とCMの露出量を中期(ピンク)と長期(緑)のトレンド(移動平均)に置き換えたもの、4番目はトレンド中期線と長期線の差分、一番下の赤線はソニーグループの株価(週の終値)である。

 ピンクのエリアで示したように、中期線が長期線を上回るテレビ露出トレンドの上昇期間が3つあり、特に最後に20年10月4日週から始まる上昇期は9週間続き、この期間内では26.6%の株価の上昇が見られた。これは、特にテレビ番組露出がそれまでの週の倍近くに跳ね上がったのが主因だ。テレビ番組の主な内容は10月16日から全国公開となる映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」を話題にしたものだった。

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