新型コロナの影響で、人の流れが大きく制限されたり、買い物の主役にECが躍り出たりと、我々の消費行動は大きく変わった。こういった個人消費の動きを捕捉できるデータが、「オルタナティブデータ」だ。まだ日本ではあまり知られていないが、海外ではデータへの投資が急拡大するなど、一大マーケットになっている。マーケターに欠かせない必修ワードを学んでいこう。

 「オルタナティブデータ」という言葉をご存じだろうか? 主に金融領域で伝統的に使われてきた財務情報や経済統計に対して、これまで利活用の進んでこなかった、POSデータ、位置情報、衛星画像などのデータのことだ。

 分かりやすいのがクレジットカードのデータだ。カード会員による買い物などの実取引データを抽出し、個人消費の動向などを分析するというもの。経済データ分析のナウキャスト(東京・千代田)が、JCBのクレジットカードデータを用いた消費指数「JCB消費NOW」を使い、個人消費の動向を分析する記事をお届けしてきたのが、「個人消費の“風”を読む~購買ビッグデータから見える今~」という連載だ。売り上げ予測や市場予測など、マーケティング担当者なら知っておきたいデータなのは間違いない。

 新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、このオルタナティブデータの普及はさらに加速している。個人消費の分析のみならず、さまざまな活用方法が模索されている。そこで今後の連載では、クレジットカードデータに限定せず、多種多様なオルタナティブデータとそのデータの活用例を紹介していくこととしたい。

 まずは、改めてオルタナティブデータとは何かを整理しよう。

 前述した通りオルタナティブデータとは、トラディショナルデータに対して、これまで活用されてこなかった代替的なデータの総称である。従来の経済指標などと比較して、オルタナティブデータの優位性は大きく3つ。(1)速報性、(2)情報の網羅性、(3)情報粒度の細かさにたけている(i)

 速報性の観点では、例えば企業の決算短信は決算期末後最長45日開示まで要するのに対して(ii)、決算予測の一助となるSNSデータやECのレビューなどのWebスクレイピングデータは逐一取得可能である。情報の網羅性の観点では、例えばこれまで歴史的に消費統計のスタンダードになっている経済産業省の商業動態統計調査では網羅できていないECの消費動向が、クレジットカードデータでは調査可能であることが挙げられる。情報粒度の観点では、多くの公的統計は月次データで提供されているのに対し、POSデータや位置情報などのオルタナティブデータは日次のデータが提供可能なため、例えば5月のGW期間とそれ以外の消費動向を比較分析したり、月中に発生した台風や地震などの自然災害の影響をいち早く把握したりすることができる点が好対照となっている。

コロナで加速するオルタナティブデータの使用

 以上のようにオルタナティブデータは、伝統的なデータでは難しかった分析を可能にさせた。特に、コロナ禍において重宝されている。

 新型コロナは人類の移動を制限し、生活様式を大きく変えた。目まぐるしく変化する社会において、速報性を有しているオルタナティブデータが注目を集めた。例えば、位置情報データを用いて日本全国各地の外出状況を分析する新聞記事やテレビ番組を目にする機会が増えた。市場調査会社Grand View Research社によると、2020年9月時点で、27年までに世界全体におけるオルタナティブデータの市場規模は約170億ドル、年平均成長率は約40%にも及ぶというリポートを出している(iii)

 では、成長を続ける市場で、どのようなオルタナティブデータが提供されているのだろうか。代表的なデータ4つを以下に挙げていく。

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