日経クロストレンドがまとめた「トレンドマップ 2023上半期」のマーケティング分野では、「音声SNS」の将来性スコアが大きく上昇した。若年層が活発に使う音声メディアへの注目が高まっている。対話型AI(人工知能)「ChatGPT」の登場で「チャットbot」の見直しも進む。また、アフターコロナが現実のものとなり、人の移動が活発化する中、移動情報を活用したマーケティング「ジオターゲティング」の注目度も高まっている。

米オープンAIが開発する対話型AI(人工知能)「ChatGPT」が大きな注目を集めたことで、「チャットbot」業界には特需ともいえる現象が起こっている(写真/Shutterstock)
米オープンAIが開発する対話型AI(人工知能)「ChatGPT」が大きな注目を集めたことで、「チャットbot」業界には特需ともいえる現象が起こっている(写真/Shutterstock)

 トレンドマップ 2023上半期のマーケティング分野は、注目されている29のキーワードを編集部が選定。それぞれを認知する人に、そのキーワードの現時点での「将来性」と「経済インパクト」を5段階で尋ね、1~5点でスコアリングしたものだ。下図のトレンドマップは右にいくほど経済インパクトが大きく、上にいくほど将来性が高いことを示す。

2023年上半期トレンドマップ【マーケティング編】
マーケティング分野のトレンドマップ。将来性、経済インパクト共にスコア「4.00」以上が高い水準
マーケティング分野のトレンドマップ。将来性、経済インパクト共にスコア「4.00」以上が高い水準

 前回の調査から引き続き、将来性スコア、経済スコアで共にトップとなったのは「EC」だ。新型コロナウイルス禍で主に物販を中心にEC市場は急成長した。多くの企業にとって収益源となったため、経済スコアは前回調査から0.12ポイント増の4.43となった。一方で、業界関係者からは「向こう5年分の成長を先食いした」という声も上がってくる。事実、本調査でも将来性スコアは前回から0.15ポイント減の4.63となった。

 前回の調査から将来性スコアを大きく伸ばしたキーワードが「音声SNS」で、将来性スコアは0.46ポイント増の3.24となった。若年層を中心に、音声メディアが復権の兆しを見せている。朝日新聞社と音声広告ベンチャーのオトナル(東京・中央)は23年2月28日、インターネットラジオ「ポッドキャスト」の利用実態調査「PODCAST REPORT IN JAPAN ポッドキャスト国内利用実態調査2022」を発表した。

「音声SNS」「チャットbot」「ジオターゲティング」の3つのキーワードは、前回の調査から将来性スコアが大きく伸びた
「音声SNS」「チャットbot」「ジオターゲティング」の3つのキーワードは、前回の調査から将来性スコアが大きく伸びた

若年層ほど「音声メディア」を積極的に利用

 同調査の結果、国内のポッドキャスト利用者数は1680万人に達していると推計している。注目すべきは利用者の年代層の内訳だ。15~29歳の若年層が最も利用比率が高く39.6%となった。30代(17.2%)、40代(17.9%)が切迫しており、50代(14.8%)、60代(10.5%)となっている。調査から、若年層ほどポッドキャストを利用している実態が明らかになった。

朝日新聞社とオトナルが共同で実施したポッドキャストに関する調査では、若年世代ほどよく利用している実態が明らかになった(出所:「PODCAST REPORT IN JAPAN ポッドキャスト国内利用実態調査2022」)
朝日新聞社とオトナルが共同で実施したポッドキャストに関する調査では、若年世代ほどよく利用している実態が明らかになった(出所:「PODCAST REPORT IN JAPAN ポッドキャスト国内利用実態調査2022」)

 21年初頭に音声SNS「クラブハウス」が大きな注目を集めたものの、ブームは短期間で過ぎ去り、話題に上らなくなった。一方で、SNS「Twitter」のリアルタイム音声会話機能「Twitterスペース」が若年層を中心に徐々に市民権を得るなど、音声というメディアが持つポテンシャルは高い。それが将来性スコアの上昇として表れたのではなかろうか。

 続いて、将来性スコアが大きく伸びたのは「チャットbot」で、前回の調査から0.39ポイント増の4.00となった。「ChatGPT特需」とも言える現象で、チャットbotが再注目されている。

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