
起業家がチャンスをつかむ上で、短い時間で自分の事業を説明する「エレベーターピッチ」は欠かせない。一般のビジネスパーソンもその話し方を学べば、普段のプレゼンに磨きがかかる。スタートアップを支援するユニコーンファーム社長の田所雅之氏に、簡潔に話して相手の心をつかむ話し方を聞いた。
※日経トレンディ2021年5月号の記事を再構成
【第2回】 緊張で汗びっしょり アイリスオーヤマの社長プレゼン会議に潜入
【第3回】 20文字の目標設定が組織を動かす サイバー人事ソヤマンの流儀
【第4回】 Amazonの会議はパワポ禁止 「事前に資料は配らない」理由
【第5回】 Zoomは既にダサい? 偶然の出会い楽しむZ世代の「JOMO」とは
【第6回】 テレワークでリーダーが口にすべき言葉は? 立大・中原教授に聞く
【第7回】 30秒で納得させるプレゼン 「エレベーターピッチ」の極意←今回はココ
設立されたばかりのスタートアップ企業が、成長に必要な資金を集めるために必ずくぐる登竜門が「エレベーターピッチ」だ。その名の通り、エレベーターに居合わせるほどの短い時間で、自社が投資対象としていかに魅力的な存在かを投資家にプレゼンするものである。ビジョンから独自性、将来像などを理路整然と、しかも簡潔に伝えて、忙しい相手に対してじっくり話を聞いてもらう約束を取り付けるのが目的だ。
こうしたエレベーターピッチの手法は、普通のビジネスパーソンの日常業務にも役立つ。自分の仕事について15〜30秒で話せるようになるには、起業家と同様に、自分の取り組みを様々な視点から振り返る必要がある。「その過程で今自分は、向き合っている仕事に対して使命感を持って取り組んでいるかを確認できる」。日米で複数のスタートアップ企業を立ち上げた実績があり、現在はスタートアップ企業の支援事業を手掛けるユニコーンファーム社長の田所雅之氏はこう話す。
その結果、実は自分が表面的に取り繕っただけの課題解決策しか考えてこなかったことに気付かされるかもしれない。例えば役員に企画を何度提案しても突き返されていたとすれば、説得力の無いプレゼンが原因だった可能性がある。エレベーターピッチを通じて自分の使命として今の仕事に正面から向き合うと、製品やサービスを使ってほしい相手が抱えている本質的な課題に気付く。どんな手立てならそれが解決できるかも考えられるようになる。
では、具体的にエレベーターピッチの中身はどうつくりあげていけばいいのか。まず、長めの「3分間ピッチ」にまとめることからスタート。ピッチは時間が短くなればなるほど難度が高くなるからだ。
そのうえで内容をそぎ落とした30秒程度のエレベーターピッチを練り込む。単なる短縮版ではなく、凝縮していくイメージだ。田所氏が勧めるのが、4つのプロセスで順番に考えていくやり方だ。自分の仕事についてエレベーターピッチができるようにする場合も、全く同じだ。
順番に見ていこう。ここでは、3分ピッチの教科書のような好例だと田所氏が言う民泊大手の米Airbnbが創業当時に行ったプレゼンを例にする。
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