
オンライン会議全盛の今、働き方が激変したことで、マネジャークラスも若手も悩みを抱えている。世代間ギャップを越えて円滑なコミュニケーションをどう図るべきか。世代ごとの行動様式に詳しい牛窪恵氏と、長年デジタル技術の発展に伴う社会変革を分析してきた尾原和啓氏が「コミュニケーションの世代論」について討論する。
※日経トレンディ2021年5月号の記事を再構成
【第2回】 アイリスオーヤマ 週イチ社長プレゼン会議でスピード開発を実現
【第3回】 20文字の目標設定が組織を動かす サイバー人事ソヤマンの流儀
【第4回】 Amazonの会議はパワポ禁止 「事前に資料を配らない」理由
【第5回】 Zoomは既にダサい? 偶然の出会い楽しむZ世代の「JOMO」とは←今回はココ
尾原 まず覚えておきたいのが、コロナ禍で、仕事でリアルタイムで話をする“同期型コミュニケーション”の質が大きく変わりました。今までだったら、隣の机に座っている仲間に「今話し掛けてもよさそうだな」と空気を読んでふらっと話し掛けられた。ところがオンライン会議が主流になると、「話し掛ける」という行為そのものが電話がいきなりかかってくるような暴力的なコミュニケーションになっています。
そんなさなか音声SNSのClubhouseが爆発的なヒットにつながったのは、お互いに耳だけでつながっていられる同期型にもかかわらず、暴力的な「話す」というコミュニケーションに“優しい階段”をつくったためだと思うんです。
牛窪 分かりやすい例えですね。同期・非同期コミュニケーションの捉え方は、世代によって違いますよね。
LINEが登場する少し前から、特に2000~14年に成人を迎えたミレニアル世代が、「FOMO」(Fear of Missing Out、見逃すことに対する恐怖感)に敏感になりました。送られてきたLINEにワクワクするより、「早くレス(返事)をしなければ」と恐れが先に来るイメージです。
会話の中身よりも、とにかくメッセージが送られてくるかどうかをいつも気にしていないといけない。そんな恐怖心、いわゆる“LINE疲れ”です。


尾原 もともとは、強制的に相手と同期を求める電話が、相手の時間を奪う存在としてしんどく感じていた人々が、チャットのようなライトにつながる非同期型コミュニケーションに飛び付いたはずなのですが。
牛窪 ミレニアル世代では、相手が今どういう状況かを見定めつつ自分の発言や行動を決めるといった、「空気を読む」風潮が生まれました。「KY」は、07年の流行語でしたよね。
私が新入社員研修を担当しても、当時から若者が意見を言わなくなった。上の世代から「つまらないことを言うな」と批判されるのも嫌なのですが、「いいね」と気に入られても「悪目立ち」になる。同僚から「何だ、あいつ」と見られたくないというのです。
彼らの多くは今30代ですが、コロナ禍のオンラインで空気を読むのも難しいとの声が聞こえてきます。
尾原 最近、米国西海岸でも、ミレニアル世代について興味深い現象が起こっています。Zoomのような強制的にスケジュールを決めて同期を強いるサービスはもはやダサいという声が上がりつつあるんです。相手が今参加できそうなら、その場で“アンスケジュールド(スケジュールを決めない)”に話すのが望ましいという風潮が生まれつつある。同期型なんだけど、しかも非同期型に近いライトなコミュニケーションが望ましいというわけです。
そういう意味で、興味関心でつながって同じ時間を共有する人に気軽に話し掛けられるClubhouseは、まさにアンスケジュールドな同期型コミュニケーションの象徴的な姿です。
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