
Amazonの会議のルールをひもとくと、一般的な「効率のいい会議」のイメージとは少し違う。図解やグラフを使う資料作りは禁止、パワーポイントも禁止。事前に資料を配布して読み込むということもしない。その理由を、日本法人立ち上げメンバーである佐藤将之氏に聞いた。
※日経トレンディ2021年5月号の記事を再構成
【第2回】 アイリスオーヤマ 週イチ社長プレゼン会議でスピード開発を実現
【第3回】 20文字の目標設定が組織を動かす サイバー人事ソヤマンの流儀
【第4回】 Amazonの会議はパワポ禁止 「事前に資料を配らない」理由←今回はココ
書籍のネット通販事業を皮切りに次々と新サービスを世に送り出し、年間42兆円を売り上げる巨大企業となった米アマゾン・ドット・コム。旧来型の小売業を淘汰する「アマゾン・エフェクト」を同社が絶え間なく起こし続けられる裏には、全社員の間に根付く超効率的な「資料」「会議」の文化が一役買っている。
「会議に出す資料は、Word形式限定。2006年ごろ、ジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)がパワポ禁止というルールを定め、以来社内で徹底されている」。日本法人立ち上げメンバーである現エバーグローイングパートナーズ代表の佐藤将之氏はこう話す。

しかも、大半のデイリーの会議向けの資料は「1ページに収めて作る」という取り決めがあり、社内でこの書類を「ワンページャー」と呼んでいる。日本法人の場合、A4判だ。
複数ページが認められる数少ないケースは、年次予算などの大型案件やプロジェクトだけだ。こちらは6ページと決められていて、「6ページャー」と呼ばれる。
資料を1ページにする発想は他の会社に無いわけではないが、アマゾンならではの流儀といえるのが、図やグラフ、箇条書き形式を廃していること。議題に応じておのおのが工夫して、文章で表現することが求められる。
「なぜなら、図や箇条書きでは読み手によって解釈にブレが生じるから。文章なら“行間を読む”必要が無くなり、共通認識を全員で持つことができる。会議に出席しなかった人が見ても真意をきちんと伝えられる」(佐藤氏)
ファクトに基づいて飾らずに淡々と説得力がある文章に仕立てたうえで会議に臨む。テンプレートは存在しないので、スタイルは人それぞれでよい。
興味深いのが、新規事業の提案時のワンページャー。アマゾンでは新たな製品・サービスを発案する場合、プレスリリース形式で資料を書く決まりがある。それも、本当に記者発表の場で発表できるレベルまで練り込む。このケースでは、記者から出るであろう質問に対する想定問答集「FAQ」や、契約した人に配布する「ユーザーマニュアル」を補完資料として通常添付する。
★Amazonの資料作り 3つのルール



資料は「いつでも」「誰でも」「正しく分かる」ように書く
- 文章(ナレーティブ)で記述する
- 経緯や説明はファクトベースで
- 「ゴール」「結論」が先、「何をするか」は後
- 1文はできるだけ短く
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