
巣ごもり需要を追い風にネットテレビ「ABEMA」の有料会員数が92.1万人に伸びるなどし、2020年10〜12月期の売上高が四半期ベースで過去最高の1310億円となったサイバーエージェント。小集団経営モデルを掲げ、積極的に若手の発案を採用して現場に裁量権を与える。〝キラキラ女子社員〞など表層的な一面も注目される同社だが、それだけ若い社員がのびのびと働いて、結果を出すところが組織としての強さの秘密だ。
※日経トレンディ2021年5月号の記事を再構成
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小集団経営モデルを人事面で掲げ、若手を抜擢して現場に積極的に裁量権を与えるサイバーエージェント。5〜50人程度で構成する子会社が幾つもあり、その社長の9割は20〜30代。小集団が機動的に動きつつも、グループ内で有機的に結び付いている。
実はサイバーエージェントでは、徹底した〝スローガン主義〞がコミュニケーションを支える文化としてグループの隅々まで染み渡っている。2005年に人事本部長に就任して以来、同社の人事をかじ取りするCHO(最高人事責任者)の曽山哲人氏は、「リモートワーク時代になり、スローガンを掲げることの価値が、グループ全体で一層高まった」と話す。
スローガン主義は、社長の藤田晋氏自らが率先して長年実践してきた。2000年ごろから半期に1度、明確な組織目標をスローガンに仕立てて、全社表彰の場で全社員に訴え掛け続けてきたのだ。サイバーエージェントが今どのようなステージに立ち、これから始まる半年間で社員にどのようなことを意識して働いてほしいか、時流を踏まえて渾身のフレーズをひねり出す。
その内容は、「No.1を目指さなければ、憂鬱じゃないじゃない」「爆グロ」「暗闇の中でジャンプ」「FRESH!」と、示唆に富んだものばかり。例えば15年4月に設定した「FRESH!」は、同氏が好きなヒップホップ音楽で使われる用語から着想を得たもの。「普通ではない。新しい。かっこいい」といったもともとのニュアンスに、斬新なものを世に送り出したいという当時の経営課題を重ね合わせた。「ありきたりやモノマネはダメ」などとしなかったのは、既存事業や前例のあるサービスを否定する姿勢ではなく、前向きな姿勢で生み出してほしいとの願いをこめたかったためだ。
このスローガンを掲げたことは、ちょうど15年4月にテレビ朝日との共同出資で立ち上げたばかりだった新会社の動画配信事業の方向性を、担当チームが固めるのに大いに役立ったという。「登録無しで視聴可能」「ザッピングしやすい画面デザイン」「恋愛リアリティーなど独自コンテンツ」といったABEMA特有のコンセプトは、このときの「それはフレッシュな発想か」といった議論を重ねた結果生まれたわけだ。
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